4話 始まりの理由

「知っているも何も。私たちは天界に行ったことがある。」

「…過去に天界に地上人が数人訪れたという話を耳にしていましたが。」

「それは靈空達だ。僕は個人的な用事で1人で行った。」

空気が薄くてよく息切れしてたなぁと過去語りを始めた靈空。それを横目に

「天人…詩良しら君は元気か?最近姿を見なくなったが。」

「詩良様…ですか…今は分かりません。」

そうか。と冬鷺は返した。


「天界の現状を話しても良いですか。」


その言葉に靈空が笑う。

是非語ってくれ、と。

自身の両手を膝に置き、リエラは泣き出しそうな声で語り始めた。

「天界は今…未曾有の脅威に脅かされようとしています。」

「その事を知るのは恐らく私だけで、最高神様ですら気付かれていないでしょう…」

「ほーう。」

「その事を知り、最高神様に報告に行こうとしたところを怪物に襲われ、地上に逃げてきたと言う訳です。」

「どうやって逃げてきたか…はその様子だと覚えて無さそうだね。」

リエラは懐から白いレザーカバーの本を懐から取り出した。金の装飾がなされ、緋色の栞が挟まれている。

「これを開いたところまでは覚えています。ただこれは禁書で…本来開いてはいけない物なんです。」

「禁書ねえ。とりあえず整理すると、天界異変ってことでいいか?」

「…未曾有の脅威というのは、天界が地上に丸ごと落ちてくるという認識で構わないかな?」

「なんで知ってるんだ?」

香琴堂僕の店に来たときにそれらしいことを言ってたからな。大方予想は付いたさ。」

「それで正しいです。そしてそれを起こそうとしているのは恐らく私の友人です…」

「じゃあそいつが黒幕だな。香琴、退治しに行くぜ!」

黒い魔女帽子を深々と被り、剣を背中に担ぎ表に出ようとする靈空。それを引き留める冬鷺。

「待て。僕は行かんぞ。そもそもどうやって行くつもりだ。」

「どうって…飛んで。香琴も飛べるだろ?」

「あんなに高くは飛べない。」

「じゃアイツを一緒に連れてこう。多分乗ってくるぞ?」

言うや否や扉を開け、颯爽と外へ飛び出していった。2人も後から家の外に出る。

「あの…」

「すまないな。靈空は昔からああなんだ。」

「解決を手伝って下さるのですか…?」

「彼女たちは恐らく。僕はパスだ。あとは靈空に付いていくと良い。迅速に解決してくれるさ。」

「そうですか…ではお世話になりました。」

「ああ。見失わないうちに追いかけるといい。」

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