3話 火種

「おーい、僕だ。居るか?」

扉を叩き声をかける。返答は2階の三角窓。

カシャリ、硝子が軋む。

「お?その声は香琴か、今開けるぜ。」

顔を出し言ったが早いか、指を扉に向けると、扉が開き翡翠の麗髪が目の前に立っていた。

「いらっしゃい!怪我か?にしちゃ外傷は無いな。」

「今回は僕じゃない。この子だ。」

「は、はじめまして…」

「香琴…お前いつの間に子供を…私とは遊びだったのか…!?」

「違う。君とは何もしていないだろ。」

「ちぇっ。まあいいや、魔力切れの治療に来たんだろ?入るといいぜ。」

クルリと背を向け家の中を進んでいく。

所々、奇音が耳に届く。

「最近は何を研究してるんだ?」

「そりゃあ火力だぜ。光と熱と星を1点に集中させ細く貫くレーザーの開発中。」

「太いのは前に出来てたが、あれは竹林が燃えたから細い方か。」

「まあそんなところだ。他にも理由はあるがな。」

押し開かれるドア。ゴチャゴチャした机と瓶が沢山詰まっている棚。それに冬鷺達3人だけの空間。

「早速だが、診察始めるぜ。」

「少しまとめておいた。」

「どれどれ。ふむ。冬鷺これは…」

「まあ気付くと思ったよ。」

「どうしたんですか…?」

「えと、リエラだったな。」

「はい。」

「「君、人間じゃないな?」」

「…………」

「まあ自己紹介だ。私は『古寺ふるでら 靈空れいく』かく言うも人間じゃなくてな。」

「僕は自己紹介済みだ。」

冬鷺を指差し靈空が言う。

「種族は言ったのか?」

黙る冬鷺。何故黙る?と続ける靈空。

「…僕は言わなくても構わないだろう?」

「ダメだぜ。リエラに言わせるんだ、お前だけ隠すなんて卑怯だからな。」

「ハァ…仕方ないか。靈空は知ってるが、僕も人間じゃない。それどころか半分死んでいる。」

「えっ…?」

「半霊半妖。元は半人半妖だった。」

「大罪犯したから人側が死ねなくされたんだっけ?」

「な…そんな…!」

「老けなくもされた。おかげで人里との関係が面倒になったよ。」

冬鷺は淡々と語り続ける。

「まあそれでも、この近辺じゃ不老不死なんて珍しくもない。こいつ含め4人。」

「4人!?」

「僕のことはもういいだろ。」

「あ、私はマ女だぜ。元人間だがな。」

「魔女?」

「カタカナの マ だぜ。間違えないように。」

靈空はちっち、と指を振り得意げに。

どっちでも発音と意味は変わらないだろう。と冬鷺に突っ込まれる。

「さ、次はリエラの番だ。」

「えぇ…」


「お察しの通り私は人間ではありません。訳は少し言いにくいですが…天使なんです。」

「天使って羽が生えててなんか白っぽいイメージのある?」

「皆が白くはないですし羽を持ってるわけではないですが概ねそうです。」

「と言うことは、天界の住人だな?」

「ご存じなのですね。」

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