逃避

第104話

シンは、深い罪悪感に包まれていた。

 

ユウを殺したのは自分。

 

何度も考えたが、その答えを覆すほどの答えは出てこなかった。

 

シンは、自分がどうしたらいいのかわからないまま、苦悩の日々を送っていた。

 

寂しい…悲しい…押し寄せてくる感情に、終わりはなかった。

 

ユウをいくら想ったところで、帰って来るわけじゃない。

 

こんなにつらい現実なら、忘れてしまったほうが楽…シンは、徐々に現実から逃げ出すようになる。

 

シンはドラッグに手を染めていった。つらい現実から逃げるのに、自分の力だけでは無理だった。

 

ハッパを手にして気分を紛らわすと、つらい気持ちが和らいだような気分になった。

 

地元の仲間を、なんとなく避けるようになった。どうしても、ユウの面影を感じてしまうからだ。

 

悪い連中とも、自然とつるむようになる。

 

輝いていたシンは、もうすっかり消えていた。

 

しかし、いくらドラッグをキメても、仲間を拒絶しても、ユウの存在は消えることはなかった。

 

いや、消えなかったのではないのかもしれない。心の奥底では、ユウを求めるシンがいつまでも存在していたのだろう。

 

忘れたいシン、忘れることを拒むシン…1人の人間のなかで、すさまじい葛藤が起こっていた。

表向きには、ユウをすっかり忘れたかのように振る舞っていたシンは、どこにでもいるヤンキーに戻っていた。

それも、中途半端な。


最悪の1年も、いつしか終わりを迎えていた。

 

外はだいぶ寒くなり、世間はクリスマス一色に変わっていた。

 

ユウを忘れようとする日々のなか、シンはある場所に向かう。

 

シンが向かった先は、ユウが通っていた洋裁学校だった。

 

目的があったわけではない。

 

無意識の心が、自然とその場所に向かわせた。

 

シン自身、まだ自分の知らないユウを求めていた。

 

ユウが見ていた世界を知れば、ユウの気持ちがわかるんじゃないのか…つじつまの合わないシンの行動だった。

 

ゆっくり階段を上がり、シンは勇気を振り絞って教室のドアを開けた。

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