第103話
でも…初めてお父さんから話を聞いたとき、シンは、ユウが服を乱されただけで逃げられてよかったと思ってしまった。
それは、あいつらがやっているような、ユウの身に起きたことに順位をつけることとどこが違うのだろうか?
怒りと悔しさ、そしてそのなかに自分自身への恐怖が生まれていた。
シンのそういう気持ちが、ユウを追い詰めたんじゃないか?
心からユウを心配していたと、自信をもって言いきれるのか?
シンのなかに、激しい後悔が生まれた。
ユウの一番そばにいたのは自分じゃないのか?
助けているつもりになって、自己満足していただけじゃないのか?
ユウを殺したのは自分なんじゃないのか?
悲劇の主人公になって、勝手に悲しんでいただけじゃないのか?
シンは、震える体を抑えることができなくなっていた。
「…ごめんよ…ごめんよ…ごめん」
シンは、何度もユウに謝った。
涙は止まらず、体は震えたまま、シンの心は、ゆっくりと蝕まれていく。
どこかの小説の主人公のように、たくましく生きていく強さは、シンにはなかった。
ユウを追う勇気さえも。
感情の行き場所を失ったシンは、ゆっくりと堕ちていくことを選択する。
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