第102話
「言えてる。なんかキモくない?」
「だよねぇ。それで復讐して捕まるシンも頭おかしいよね?」
「2人してキモカップルでお似合いか」
「だねぇ、言えてるよ」
笑い声とともに、その言葉はシンに届いた。
正直、耳を疑った。
シンは、自分のことを悪く言われるのは我慢したが、ユウのことを言われるのだけは耐えられなかった。
今にも殴り飛ばしてやりたい気持ちを必死に抑え、教室の壁を思い切り蹴り飛ばした。
「誰だ?」
教室から数人の生徒が出てきた。
シンは軽く睨みつけ、すぐに自分の教室に戻った。
「…シン」
後ろのほうから何人かの声が聞こえたが、それ以上誰も追っては来なかった。
シンのなかで、怒りと悲しみが複雑に絡み合っていた。
無言のまま教室に戻ったシンは、即座に帰る準備をした。
「シン、どうした?」
何人かのクラスメートが声をかけてきたが、シンに答える余裕はなかった。
5時間目が始まる寸前、シンは学校を出て行った。
どうしていいかわからなかった。
ただ悔しくて、涙を堪えることができなかった。
たった1人、静かな駅のホームで、シンは泣いた。
ユウを馬鹿にされた悔しさと、ユウのことを勝手に笑い話にしているやつらへの怒りが、涙として現れた。
ユウの死は、馬鹿にされるようなものなのか?
それぐらいで死ぬやつは、馬鹿でキモイのか?
たしかに、自殺はただの逃げなのかもしれない。
だけど、なんでそんなことを言われなきゃならない?
お前らにユウの何がわかるんだ?
イジメに耐えて、それでも我慢ができなくて自殺してしまう人は、かわいそうと泣かれるのに…。
病気と必死で戦って、それでも絶えられずに自殺をしてしまう人は、頑張ったと涙を流してもらえるのに…。
同情してくれなんて言わない。
ユウのために泣いてくれとは言わない。
だけど、ユウに対して勝手なことを言うのだけは許せない。
周りの声なんて、仕方がないのかもしれない。
それでも…人の死に順位やレベルがあるのだろうか?
世の中には、これならば自殺していい、こんなんで死ぬのは馬鹿だ…そんなランクが存在するのだろうか?
自殺…そのつらさは、人によって様々ではないのだろうか?
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