After Story 2章
声
第101話
学校に通い始めて1週間。目立たないように、冷静を装っていた。
「大変だったね」
「なんでも相談に乗るからね」
「シンの気持ち、わかるよ」
数々の同情の言葉が、シンにとってはものすごくうざかった。
恋人の仇を取った彼氏…悲劇のヒーローのような扱いだった。
お前らなんかに俺の何がわかる? 人を憐れみの目で見るな。
同情なんて、自分も同じ気持ちを疑似体験して、感傷的になりたいやつらのエゴだと思った。
そうやって他人の感情を体験して、勝手に泣いたり感動したり…俺はドラマの主人公ではない。
シンは、自分が見世物にされている気分だった。
そんな同情にはたしかにムカついていたが、それによって学校に多少いやすくなったのも事実だった。
だけど、シンはどうしても周りに馴染めなかった。
毎日教室に来て、外を眺めながら1日が終わる。
シンは、何度もユウに問いかけていた。
「これでいいのか?」
ユウと一緒に登校するためだけに高校に進学したシンに、いまさら学校なんてなんの意味があるのかわからなかった。
答えなんて、もちろん返って来ない。
かといって、自分で見つけることもできない。
ならば、ここにいるしかなかった。
シンには、それしかできることがないのだから。
少しずつ平凡な毎日を取り戻していたシンの胸に、周りの声は残酷にも突き刺さった。
耳を疑うほどの言葉が、シンの傷をさらにえぐった。
ある日の休み時間、シンが隣の教室の前を歩いていると…ふと、女の子たちが話す声が耳に入った。
シンの存在に気がついていたのか、わざとらしく残酷な言葉が投げかけられた。
「ねぇ知ってる?」
「なになに?」
「ほら、あのシンの彼女」
「あぁ、自殺したんだっけ?」
「そうそう」
ユウの話題だった。
いつもなら、そんな話は聞き飽きていて素通りするのだが、なぜかそのときだけ、シンは立ち止まった。
「なんかさぁ、レイプされかけたんでしょ?」
「らしいね…でもさぁ、それぐらいで死ぬ? 普通?」
「だよねぇ、純粋ぶって悲劇のヒロインでも気取ってたんじゃないの?」
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