クリスマスライブ

第45話

クリスマス・ライブ当日。

今年最後のライブだ。


メンバー全員、気合い入りまくりだった。

シンの町には2つの中学がある。

今回のライブは、2校合同ライブだった。


出演するのは全部で5組。負けるわけにはいかなかった。

それに今回のライブには、もうひとつ大切なイベントがあった。


すべての曲をオリジナルで挑(いど)むこともそうだが、今回の主役はハジメだった。


前回のライブに来ていた隣の中学のマユミちゃん。

ハジメは、そのライブでマユミちゃんに一目惚れした。


メンバーで必死に考えた結果、ハジメにライブで告白させることにした。


ギターは下手くそでも、メンバーが集まれたのはハジメのお陰だ。

このライブは、ハジメへのクリスマスプレゼントだった。


もちろんハジメには、ライブ直前までそのことは内緒だった。


もうすぐライブが始まる。何度味わってもたまらない緊張感。

狭いライブハウスは、2校分のお客さんで一杯だ。


シンたちの出番はラストだった。

4組目が終わる。


「さぁぁぁて。出番だ、行くぞ」


『おぉぉぉぉ』


そこでシンがそっとハジメに耳打ちする。

「ハジメ、ラストのギターソロがあるだろ?」


「なんだよ?」


「ギターソロが終わったらマユミちゃんに告白しろ。そのためのギターソロだ」


「はぁ? なんだよそれ、できねぇよ」


予想通りのリアクションである。

その後、メンバー全員でハジメの肩を叩いた。

ぽつんと立つハジメの前にメンバーが横一列に並び、指差した。


『お前が今夜の主役だ』


メンバー全員、「決まった」という顔をしていた。


「ちょちょ、待ってよ」


ハジメは突然のことに慌てていた。


「さぁて行くぞ」


間髪入れずに、シンがかけ声をかけてステージに向かった。


「なんなんだよ、あぁぁこうなりゃやけくそだぁぁ」


全員が勢いよくステージに出揃った。

クリスマスなので、もちろん全員サンタの格好だ。


「みんな、ラストバンドのL.B.Cでぇす」


シンの元気な声が響くと、ラストということもあり、ものすごく盛り上がった。

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