第36話

「えっ? 俺は願い事なんかしてねぇよ?」


ユウはニッコリしながら答えた。


「大丈夫、シンが着けてるときでも効果があるぐらい、私が念を込めて編んだんだから」


「なにを願ったの?」


「それはね、シンはいつも1人で悩んだり苦しんだり、今回みたいに暴走したりしちゃうから、精神の安定を願って。シンがいつまでも幸せで、気持ちが落ち着きますように、って作ったんだよ」


ニコニコしながら話すユウを見て、シンは、ユウが彼女で本当によかったなぁと心底思っていた。


「なに、じっと見て。嬉しくないの?」


「えっ? そんなことないよ、ありがとう」


「よろしい。それに私とお揃いなんだからね」


「ほんとに?」


「もちろん。大切にしなかったら、わかってるでしょうね?」


「もちろんです」


ユウは右足を出しながら満面の笑みだった。

シンはユウの笑顔を見てやっと安心した。


この当時、「キレる若者」という話題をよく耳にしていた。


シンもそんな若者の1人なのだろうか?


何かをきっかけに抑えられない感情が溢れ出す。

そんな自分にシンは怯えていたが、ユウの存在がそんな悩みを吹き飛ばしてくれていた。


今もシンの右足には、4代目となるミサンガが付いている。

時が流れても、ユウの強い願いは、今もシンの心のなかに刻まれている。

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