第35話
シンは倒れてるやつに向かって、また襲いかかった。
カズさんの、蹴りかパンチかわからない一撃が飛んできた。
「やめろって言ってんだろうがよ」
カズさんの本気の蹴りが何発かシンに入る。
さすがにシンは動けなくなった。
「なんで止めんだよ、そいつぶっ殺さねぇと気が済まねぇんだよ」
シンは倒れてる相手から一切視線を外さなかった。
「シン、なにがあったかは俺がきっちり聞いといてやる。黙って帰れ」
カズさんが本気で睨んできた。
さすがにブチギレていたシンでも、その場を後にするしかなかった。
シンは行き場のない怒りを胸に、とぼとぼと家に帰った。
後から聞いた話だが、カズさんが止めてくれなければ、相手を殺すか、シンがただでは済まなかったという。
それでも相手は、十分にボロボロになっていた。
カズさんのお陰か、その後仕返しをされたり、傷害で捕まることはなかった。
ユウを轢いた理由は、族をやめてバンドに打ち込んでいるシンが気にくわなかった、ということだけだったという。
翌日の退院のとき、ユウからコブシのことを指摘された。
「もう馬鹿なんだから。こんなんでシンも怪我したらどうするの?」
「はい、すいません」
とくにユウに何か言ったわけではないが、すべて見透(みす)かされていた。
ユウに指摘されて初めて、自分のやったことがどれだけ怖いことだったかを認識した。
もともとシンは、とても臆病な人間である。
それでも、何かをきっかけに自分でもわからなくなるぐらいに暴走してしまう。
そんな自分に、シンは震えた。
「なにをいまさら震えているの? 仕方ないなぁ、誕生日にあげようと思ってたんだけど、二度とこんなことしないでよ。今回は私のためにってことで許してあげる」
椅子に体育座りのような格好でうずくまるシンを横目に、ユウは机からあるものを取り出した。
「シン、右足を出して。ほら、早く」
「おっ、おう」
シンは言われた通り、足をユウのほうに差し出した。
「よし、着いたよ」
「なんだこれ?」
シンは不思議そうに、自分の足に付いている、カラフルなビーズが付いた紐(ひも)を見た。
「知らないの? ミサンガだよ」
「…ミサンガ?」
シンはまだわからない様子だった。
「本当に知らないんだ? 願いを込めて着けると、切れたときに願いが叶(かな)うんだよ」
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