第34話

先輩はそのままシンに殴りかかってきた。


2、3発殴られたであろうか。

しかし、族をやめるときよりは痛みを感じなかった。


『人間、キレているとこんなものか』


シンは心のなかで思った。


次の瞬間、シンが反撃を開始する。

今やヤンキーからバンドマンになったシンだが、小学生時代は全国大会にも行くぐらいレスリングに没頭していた。


先輩の腕を掴むと、そのまま投げ飛ばした。

後は石を掴み、必死に投げつけて抵抗した。


「やめるべ、こいつ頭おかしいぞ。馬鹿ガキ相手にしても仕方ねぇから帰るべ」


シンの異常な反撃に呆れたのか、先輩たちはその場を後にした。シンはホッとして座り込んだ。


「つぅ」


その瞬間、胸に痛みが走った。

さすがに何発か殴られている。

落ち着くと痛みがこみ上げてきた。


しかし、ここで終わるわけにはいかない。

シンは痛む胸を押さえ、公園へ向かった。


公園に到着すると、見慣れた顔が並んでいた。


「おい、こんなかでユウ轢いたボケはいるか?」


全員がシンを睨みつけた。

そのなかの1人がシンに寄ってきた。


「軽くこづいただけだろ? そんなムキになるなや。敵討(かたきう)ちか? 泣かせる…」


「殺したるわ、ボケがぁ」


すでにシンは殴りかかっていた。

相手が倒れれば馬乗りになり、何度も何度も殴り続けた。


周りにいたやつは、必死にシンを止めようとしていた。

しかし、シンにはユウを轢いたやつしか見えていなかった。


腕にも服にも血が付き始めていた。


と、その瞬間。


「うっ」


シンは後ろに吹き飛ばされる。


「もうやめろ、シン」


聞き慣れた怒鳴り声だった。

シンが睨んだ先にはカズさんが立っていた。


「シン…なにがあったかは知らないが、もうやめろ」


しかし、完全にキレていたシンには通じなかった。


「邪魔だ、どけや。そいつ殺したる」

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