3rd Season

潜む悪魔

第32話

2学期に入り、シンは学校にも順調に通っていた。

初ライブがよかったのか、たまたまなのか、クリスマスのライブも決まった。


ユウとの時間も大切にして、シンはユウとバンドを上手く両立できるようになっていた。


ユウは、卓球部のキャプテンになった。


お互いに前よりは忙しくなり、2人はポケベルをもつようになる。

シンはあまりこういう機械が得意ではなく、メッセージにならない文を送り、ユウにいつも怒られていた。


そんなある日、もうすぐシンの誕生日というときに事件が起こる。

この事件がきっかけで、シンのなかに眠っていた部分が少しだけ顔を出すことになる。


それは、1通のメッセージから始まった。


【イマスグビヨウインニキテ ユウママ】


メッセージを見たシンは、すぐさま病院に向かった。

いったい何が起きたのか、まったくわからなかった。


息を切らせながら、シンはユウがいる病室に辿(たど)り着いた。

そこには、想像とは違った笑顔のユウとお母さんがいた。


「シン君、急にごめんねぇ。この子、バイクに撥(は)ねられたのよ」


「えっ? 怪我は?」


呑気なお母さんに拍子抜けしたが、ユウがバイクに撥ねられたのは事実。

シンは心配そうに聞いた。


「大丈夫だよシン、軽く当たっただけで大した怪我はないから」


元気そうなユウを見て、シンは安心した。


ユウは大事をとって1日だけ入院するとのことだった。

ホッとしたシンは椅子に座り込んだ。


「よかったぁ」


「そうだシン君、コーラ飲む? おばちゃん帰らなきゃいけないから、ユウの話し相手になってあげて。じゃあね」


そう言うと、お母さんは病室から出て行ってしまった。


「いやぁ、ほんと心配したよ。でもよかった、ほんとに」


シンはコーラをぐいっと飲んだ。


「そういやぁ、相手はどうした?」


すると、さっきまで笑顔だったユウが少し困った顔をした。


「うっ、うん、捕まってないんだよ」


「逃げたのかよ、んなろぅ。特徴とかは?」


「それが…」


ユウは口ごもった。


「どうした?」


「あのね…シン…多分なんだけど…カズさんのチームの人だと思うの」


シンはハッとした。


「どういうことだ? バイクはわかるか?」


シンは鋭い目つきでユウに問いかけた。


「多分、黒い小さいバイクだよ。単車じゃなかったよ」


シンの表情がさらに険しくなった。

ユウに怪我を負わせるだけでも許せないのに、それが知っているやつならなおさらだ。

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