初ライブ

第25話

バンド結成から6カ月。

みんな2年生になっていた。


相変わらずシンとユウは仲がよく、これといった喧嘩もなかった。


季節は、夏の入り口まで来ていた。


いつものようにメンバーと集まり、バンドの練習をしていたある日、ドラムのカツヤからみんなに提案があった。


「なぁみんな、ライブやりたくねぇか?」


全員がカツヤのほうを注目した。

バンドをやっていて、ライブをやりたくないなんてやつはいない。


全員が練習の手を止め、カツヤの周りに集まった。


「そんな真剣に見つめるなよ。まぁ…兄貴のライブに参加するって話なんだけどさ…」


『ライブ?』


メンバー全員が目を見合わせた。


「おぅ、ライブやってみるか?」


一瞬みんな考えた…。


『やる!』


もちろん、迷う理由なんてなかった。


みなライブをやりたくてウズウズしていたし、満場一致でOKした。


コピーの曲は何曲かできるようになっていたし、ライブまでは2カ月ある。

まだまだ練習はできる。


L.B.Cは、この瞬間からいつも以上の猛練習を始めた。


しかし、バンドの練習に熱中するあまり、シンは大切なものを失いかけていることに気がつかなかった。


ライブまであと2カ月。

全員、練習にはかなり熱が入っていた。


そんなある日、シンがメンバーに無茶な提案をする。


「あのさぁ、コピーだけじゃなくて…オリジナルやらないか?」


全員が、シンを見ながら「なにを言ってるんだ?」という顔をしていた。


カツヤは、シンをなだめるように話し始めた。


「シン、たしかにオリジナルをやりたい気持ちはわかるが、さすがに素人の俺たちが2カ月でやるのは無理だろう」


全員が頷いた。


「わかってる…でもやりたいんだ、どうしても。ユウの誕生日なんだよ、ライブがある8月26日は。みんな頼むよ」


シンはメンバーの前で土下座した。


頭を上げると、メンバーたちは半分呆(あき)れた顔をしていた。


「しょうがねぇなぁ…まぁ、リーダーの愛するユウちゃんのためなら仕方がないかぁ。なぁ、みんな」


ハジメがメンバーに聞いた。


「ったく、リーダーのためなら仕方がないか」


カツヤが頷いた。


「わがままだからなぁ、うちのリーダーは」


コウジも仕方がないなぁって顔をしながらだけど、納得

してくれた。


「マサフミはどうだ?」


シンが問いかけた。


「まぁ、シンが言うなら仕方がないべ」


シンは立ち上がりガッツポーズを決めた。


「みんなありがとう」


シンはメンバーに抱きついた。

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