第23話

1時間は話し込んだだろうか、シンは急に立ち上がった。


「なぁみんな、せっかく集まったんだし、楽器聴かせてくれないか?」


シンの提案に、真っ先にコウジが立ち上がった。


「そうだな、ハジメもつけなよ」


「おっ俺も?」


ハジメは少し戸惑っていた。


「それじゃ俺も」


マサフミもゆっくり起き上がり、準備を始めた。シンとカツヤは、じっと準備が終わるのを待っていた。


コウジのギターが鳴り響いた。

なんの曲かはわからなかったけど、間違いなくカッコよかった。


それにマサフミが乗っかってきた。


「あれ? ハジメはどうした?」


シンがハジメに問いかけた。

ハジメは1人、ギターを抱え苦笑いしていた。

するとコウジがハジメに何かを教え出した。

一定のリズム。


コウジのギター、マサフミのベース、ハジメのギター。

上手いか下手かは置いておいて、そこには音楽が生まれていた。


「あぁ俺も叩きてぇなぁ」


カツヤは立ち上がり、スティックをもちながらドラムを叩く真似をした。


「そういえば、シンはSOPHIAが好きなんだろう?」


「うん」


コウジはマサフミに何か合図をして、SOPHIAのライブで1曲目に聴いたあの曲を弾き始めた。


「歌ってみなよ」


「まじかよ」


シンは音痴だったし、いきなり歌えと言われても自信はなかった。

それでも、断れる雰囲気ではなかった。

やけくそで、シンは思い切り歌い出した。


多分メチャクチャだっただろう。

だけど、なんだか気持ちよかった。


冬だというのに、公民館には小さいストーブが1つだけだった。

それでも、みんな汗だくだった。


技術はバラバラで、演奏も合っていない。

シンの歌は音痴だし、歌詞も適当。

それでも、シンのバンドはここから始まった。


42それからというもの、放課後の空いている時間は毎日のようにシンの家に集まった。


土日になれば、ユウやショウタ、アヤコも見学に来た。


いつの間にか年も明け、3学期に入った。


いつものようにメンバーでシンの家に集まっていた。

そのとき、シンがポツリと言った。


「俺たちさぁ、バンド名って決めてないよな?」


『あっ』

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