第22話

「ちょっちょ、待ってよ。俺の担当がなくないか?」


さっきまで黙っていたハジメが慌てて話に入ってきた。


「ギターかぁ、まぁそりゃ後で考えようぜ」


「まじかよ」


ハジメは残念そうな顔をしていた。


「じゃあ次の休み時間な」


「おう」


そう言うと、カツヤは教室に戻って行った。

バンドができる…その喜びで、授業がいつもの何倍にも長く感じた。


チャイムの音とともに、シンとハジメは立ち上がった。

急いで廊下に出ると、すでにカツヤが待っていた。


「早いな、行くべ」


そう言うとカツヤは、コウジとマサフミのところへかけて行った。


そして、シンのバンドのメンバーとなる5人が初めて集結した。

「えっとこいつが、ギターのコウジ」


「うっす」


背はカツヤと同じくらいだが、体型はカツヤよりはだいぶスマートだった。典型的な、爽やかスポーツマンといった印象だろうか。


「んでこっちがベースのマサフミ」


「よろしく」


マサフミはおとなしい印象で、何より目つきが悪かった。

でも実際は、目が悪いのにメガネをかけないから、ガンをつけてるような目になってしまっていたのだ。

「よくヤンキーに絡まれる」と、本人は困っていた。


「よろしく、俺はシンだ」


シンは2人と握手した。


「じゃあ…せっかくだから放課後集まらないか?」


シンからの提案だった。全員が顔を見合わせた。


「それも悪くないな。ならみんな楽器をもって集合しないか?」


カツヤが沈黙を破った。


『あいよ』


「よし決まりだ、どこに集まる? シン」


「そうだなぁ、俺の家なら公民館だし集まれるだろ?」


シンの親は公民館の管理人をしていたので、使っていないときは自由に空いている部屋を使うことができた。


「じゃ決まりだな。放課後シンの家に、楽器もって集合」


『わかった』


全員が頷(うなず)いた。


シンは胸の高鳴りを抑えられなかった。

自分にも、のめり込めるものが見つかったかもしれない。


放課後。


シンは真っ直ぐ家に帰り、みんなを待っていた。


『こんちわぁ』


全員が揃ってシンの家に到着した。


寒い冬の昼下がり、5人は公民館の部屋の真ん中で円陣を組んで座った。


集まって1日もたってないメンバーは、なんとなくぎこちなかった。

それでも、まるで自己紹介のように各々(おのおの)の話を笑いながらした。

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