第18話

「どうもどうも、僕がショウタでございます。でこっちが…」


「私の彼氏のシン」


ユウがシンの腕を掴(つか)んできた。

シンは正直びっくりしたが、それでも悪い気はしなかった。


「あっどうも、シンです。よろしく」


「まぁまぁこの2人はほっといて、楽しく行こうよ、アヤちゃん」


4人で電車に乗り、ライブ会場に向かった。


シンは15歳離れた兄貴に連れられ、何度かライブを見たことはあったが、友達、ましてや彼女とライブに行くのは初めてだった。


ライブ会場に着いたときには、4人のテンションは上がりまくりだった。

ユウが必死に取ったチケットは、前から2番目の最高の席だった。


なぜか買ってしまった季節外れのウチワを手に、まだかまだかとオープニングを待っていた。


照明が消え一瞬静まり、光が当たった。


『Kissing blue memories』


会場は歓声に包まれた。

思わず4人も大歓声を上げた。

きらびやかなステージ、すさまじい迫力。目の前で見るライブはすごかった。


2時間は、あっという間に過ぎてしまった。

ライブが終わり、外に出て来たときには清々しい汗をかいていた。


「ふぅ楽しかったぁ。このまま帰るのもなんだし、みんなで御飯食べてかない?」


ユウからの提案だった。


「いいねぇ、シンはもちろん、アヤちゃんもいいでしょ?」


ショウタは相変わらずノリノリだった。


「うん、みんなが行くならいいよ」


こうして、ライブの興奮も収まらないままファミレスに行き、ライブの感想をみんなで話した。


「バンドやってる人ってカッコいいよねぇ」


ユウの何気ない一言だった。


「うんうん。シン君、バンドやって歌ってみれば?」


アヤコからの、思わぬ提案だった。


「えっ? いやぁ俺は歌なんて歌えないよ」


「そうだよアヤコ、シンはすごい音痴なんだよ」


「…うるさいなぁ」


「口ずさむ歌で酷(ひど)いんだから」


「俺は俺は? モテるならやってみようかなぁ」


ショウタが話に割り込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る