2nd Season

きっかけ

第17話

シンとショウタは、週末にはユウを含めて3人で一緒に遊び、平日はしっかり学校に行く…数カ月前までは想像もつかない、当たり前の生活を送っていた。


シンは部活には入らなかったが、ショウタは野球部に入った。

ユウも、真面目に学校と部活に励(はげ)んでいた。


シンだけが、何ものめり込むものを見つけられずにいた。


もう一度レスリングをやる? 考えられない。

テニス部? 問題外だった。


学校にはちゃんと行ってるし、彼女もいる。

それなりに充実していたが、なんとなく空(むな)しさがあった。


そんなときだった。


12月に入り、もうすぐクリスマスという頃、ユウからデートの誘いがあった。


ユウが大好きで、2人で聞くようになったSOPHIAのライブだった。

まだこの頃のSOPHIAは、デビュー・ミニアルバムが出たくらいでチケットも楽に手に入ったのだ。


チケットは4枚。ユウが友達を誘い、ショウタを含めて4人で行くことになった。


ショウタは、ユウの友達が来ると聞いて浮かれていた。


シンとユウは、グループデートではあるが、これが初めての遠出だった。


ライブ当日、シンはショウタに急かされて、待ち合わせ場所に30分も早く到着した。


「早すぎんだろうよ」


「いいんだよ。ユウちゃんたちが来て、『待ったぁ?』って聞かれて、『今来たとこ』って言いたいんだよ」


ショウタのはしゃぎっぷりに、シンは少し引いてしまった。


「なんだそりゃ。にしても早いだろ? 遠足ではしゃぐ小学生じゃあるまいし」


「まぁいいじゃないか、今日は俺の運命の出会いかもしれないの。今度は俺に協力しろ」


「俺はなんか協力してもらったか?」


「ひどくねぇか? 俺がいたから、ぶさいくなお前にも彼女ができたんだろうが」


「はいはい、そうですか、協力させていただきますよ」


寒空の下、2人してこんな話をしながら待っていた。


10分前になり、ユウたちも到着した。


「早いね、待ったぁ?」


「いやぁ待ってないよ、ユウちゃん」


シンは陰で笑っていた。


「あっ紹介するね。この子が私の幼馴染(おさなな)じみのアヤコ、よろしくね」


「よろしくね」


アヤコは軽く会釈した。髪は薄い茶髪で小柄な子。

ユウの幼馴染みだけあって、活発な感じの子だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る