第16話

痛くて痛くてたまらなかったが、このあとカズさん自らが病院に運んでくれた。

治療が終わり出てくるまで、カズさんは外で待っていてくれた。


「おぅ、大丈夫か? 痛々しいなぁ」


正直理不尽な言葉だが、何も言い返せなかった。


「まぁ、まだお前らは中坊だし、考え直すのもいいだろう。理由は聞かないが、なにかあったら言えよ。族はやめても仲間だからな」


すごく優しい言葉だった。


『お世話になりました』


にっこり笑うと、カズさんは帰って行った。


後から聞いた話だが、やめるときのリンチはかなり手加減してくれたとのことだった。


そして、2人はここから再スタートを切ることになる。


普通の中学生として。


「シン、ユウちゃんに連絡したほうがいいだろ? 心配してんべ」


「そうだなぁ、もう家にいるよな」


シンは近くの公衆電話に向かった。


「はい」


出たのは、お母さんの声だった。


「あっ、あの、シンと言います。ユウさんいますか?」


「あっ、はい、ちょっと待ってね」


「はい、もしもし」


「俺だけど…」


「どうしたの?」


「俺…族やめてきたよ」


「本当に? 平気なの?」


「2人してボロボロだけどな」


「ショウタ君も? 大丈夫?」


「うん」


「でも元気そうでよかった、お疲れさま」


「それと…学校も行き始めたから」


「本当に? そうか…頑張ったね」


「近いうちに、遊ぼうな」


「うん、ゆっくり休んでね」


「じゃあね」


「バイバイ」


短い会話だったけど、すべて終わったんだと、安心できた。


「いいなぁ、俺にも彼女できないかなぁ」


ショウタがそっとつぶやいた。


「まぁ、俺ぐらいカッコよくねぇと無理だろ」


「お前には負けねぇよ」


傷だらけで馬鹿笑いしながら、2人は帰った。

次の日も体中痛かったが、休まず学校に行った。

傷のことは聞かれたが、「コケた」としか話さなかった。


気がつくともう、2学期も終わりに近づいていた。

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