第7話
このなかにユウがいるはずだ。どこの教室かはわからないが…。
鼓動(こどう)はかなり高まっていた。
学校が終わるまでは、あと1時間。部活は何時までだろう?
卓球部って言ってたから、あの体育館でやってるのかな…。
シンは、そんなことを考えていた。
「ショウタ、行くべ」
シンはチャリをこぎ始めた。
「いいんか? 待てよ」
ショウタは急いで追いかけてきた。
いざゲーセンに着いても、ユウに会いたくて来ているので、やることはなかった。
結局、1時間ぐらい入り口に座っていた。
すると、ユウと同じ学校のジャージを着た子たちが何人か下校してきた。
黒髪でセミロングの子は、みんなユウに見えてしまう。
「なぁシン、そんなに気になるなら告白すれば?」
キョロキョロしているシンを見て、ショウタが言った。
「えっ?」
「告白」という言葉が、シンの胸に突き刺さった。
シンは、ショウタに何も言い返すことができなかった。人を好きになるということに、初めて気づかされた一言だった。
「俺…ユウのこと好きなんかなぁ」
「それはシンにしかわからねぇけど、多分そうなんじゃん」
今までも、好きな子はいた。かわいいとか優しいとか、たいしたものじゃないけれど、理由は何かしらあった気がする。
ユウは正直ムカつくし、生意気だし、たいしてかわいくもない。それでも、なんだかとても気になる。
俺はユウのことが好きなのか…頭はパニック寸前だった。
「違うんだよ。ムカつくけど喧嘩はしたくねぇんだよ。女だし、なんつぅか、その…」
シンは、思わずショウタに言い訳をしてしまった。
「わかった、わかった。ひとまずユウちゃんに会いに行くべ、それが一番。ほら行くぞ」
ショウタはシンの腕を掴んだ。
「待てよ、でもどうやって?」
「なに、迷ってんだよ。俺らはヤンキー、なら特攻(ぶっこみ)しかないでしょ」
「おい、まじかよ?」
ショウタは自転車でユウの学校にすっとばしていった。
今度は、シンがショウタを急いで追いかけた。
さっき立ち止まった校門を入り、すかさず体育館に向けてダッシュした。
体育館の近くに来ると、たくさんの声が聞こえた。
ショウタと2人で座り込み、下のほうから覗(のぞ)き込んだ。
そこには、綺麗に並んだ卓球台があった。
シンは必死にユウの姿を探した。バスケ部やバレー部が入り混じっていて、なかなか見つけられなかった。
そのとき、シンの目が止まった。
綺麗に並んだ卓球台の一番奥でラリーをするユウを見つけたのだ。
ジャージの袖(そで)を捲(まく)り、必死に練習するユウの姿が目の前にあった。
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