気持ち
第6話
ユウと出会ってから、1週間がたった。
シンは何度も電話しようと思ったが、いつも電話の前で動きが止まってしまった。
変わっていて生意気で、たいしてかわいくもないあんなやつのこと、なんで気にならなきゃいけないんだと、頭のなかで葛藤(かっとう)していたのだ。
今まで、すべてにおいて人に流され、なんとなく生きてきたシンには、自分から動くということがとてつもなく難しかった。
いつもと変わらず、昼間はショウタとコンビニの前に座っていたが、ユウに会ってからは学校が終わる時間には2人でシンの家に帰り、電話を脇に置いて時間を潰していた。
「なぁシン、ユウちゃんの電話、待ってんだろ」
「そんなんじゃねぇよ、なんであんなやつのことなんか」
「かければいいべ? 待っててもしゃあねぇべ?」
「だから違うって。外も飽きたから家にいんだよ」
「そうですか」
すごく気になる…なんで? シンはそう自分に問いかけた。
ショウタにからかわれると、なんか胸のなかがモヤモヤしたり、イライラしていた。
この気持ちがなんなのか、シンにはわからなかった。
結局シンは何もできないまま、また1週間を過ごしてしまった。
電話をすれば、少なくともユウの声は聞けるのに、そんな簡単なことがシンにはできなかったのだ。
学校に行っていないシンにとっては、毎日が暇の連続だった。
平日はショウタとフラフラしながら、週末は集会に参加する…それくらいしかやることがなかった。
「なぁショウタ、たまには隣町まで遊びに行かねぇ?」
「ん? 素直にユウちゃんに会いたいって言えばいいんに」
「違うよ、あそこのゲーセンに行きてぇの」
「そうだなぁ、ユウちゃんの学校の近くのゲーセンにね。暇だし付き合うよ」
「だから違うって」
ショウタのカンがいいのか、シンの行動が単純なだけなのか…まぁ、どちらでもよかった。
ただ、ユウにもう一度会いたいと思っていることはたしかだった。
今まで感じたことのないこのモヤモヤの原因がなんなのか、ユウに会ってたしかめたかったのだ。
シンは、ショウタと一緒にユウの学校の近くのゲーセンに向かった。
近づくにつれて、心臓は爆発しそうなくらい脈打っていた。
「おいシン、ここがユウちゃんの学校だろ?」
「知ってるよ」
2人してユウの学校の前で立ち止まった。そこからゲーセンまでは5分の距離。
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