第5話

ユウは隣の町の学校に通う中学生で、シンと同い年。

部活は卓球部で、小学生の頃は空手や柔道を、親に無理矢理やらされていたとのことだった。


種類は違うが、格闘技をやっていたということが、ヤンキーと真面目な女の子の唯一の共通点だった。

少しだけど、親近感が湧(わ)いた気分になった。


どれくらい話をしていただろうか、辺りはすっかり暗くなった。


すると、ショウタが急に立ち上がった。


「わりぃ、シンにユウちゃん、俺用があってさ、もう帰らなきゃ。ごめんな」


そう言うとショウタは、さっさと帰ってしまった。


「ユウ、お前もそろそろ帰ったほうがいいんじゃね? 親も心配するべ」


なぜだかそんな言葉が出てしまったが、本音ではもう少し話していたかった。


ユウはうっすら笑って言った。


「へえ、ヤンキー・シン君でもそんなこと気にするんだ。そうだね、次の電車で帰るよ」


「ホームまで送るよ」


「優しいじゃん、ありがとう」


数時間前はあんなにムカついて、喧嘩(けんか)口調だったのに…なんとも不思議な感じだった。


駅のホームに座りながら、たわいもない話をしていた。

話が途切れたとき、シンはふとユウに言った。


「また…会って話できる?」


ユウはちょっと驚きながら、笑顔で答えた。


「こんな強気な女とまた会いたいの? 物好きなんだね。まぁなんだかんだ言ってこんなに話したし、これで終わりも寂(さみ)しいよね…うん、いいよ」


お互いの自宅の電話番号を交換した。


ずっとユウのペースに乗せられていたが、今までに会ったことのないタイプのユウが、シンはとても気になっていたのだ。


電車のドアが閉まる瞬間、シンはそれまで経験したことのない寂しさを感じていた。

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