第4話

さっきの子を待っていたわけじゃないが、その日はショウタと2人、コンビニの前でダラダラと暇を潰(つぶ)していた。


どれくらい時間がたっただろうか、さっきの子たちのグループがコンビニに向かって歩いて来た。


「おいシン、あれさっきのじゃねぇ? どうするん?」


シンはなぜか戸惑(とまど)ってしまった。いまさらなんて話しかけたらいいかわからず、その場から動けなかった。


「おいシン、どうした?」


「別になんでもねぇよ」


シンはタバコをくわえながら、彼女から視線をそらした。


「おうシン、あいつこっち向かってくんべ?」


「はぁ?」


シンは振り返った。すると、彼女のほうから声をかけてきた。


「あれ? まだいんの? 暇人だね、田舎ヤンキー」


相変わらずのムカつく態度だ。


「おいシン、言われてるぞ?」


「わかってるよ」


しかし、シンには睨み返すことぐらいしかできなかった。


「あっみんな、私1本後の電車で帰るから先行ってて」


そう言うと、その子は真っ先にシンのほうに向かって来た。


「なんだよ?」


「あんたが、なぁんか言いたそうな顔してるから、わざわざ電車遅らして来てやったのよ」


シンにはこいつが何を考えているのか、まったくわからなかった。

少なくとも、こいつが変な女であることは間違いなかったが、その勢いに圧倒されたシンは、何も言い返せなかった。


「やっぱりあんた、だらしないねぇ、なにか喋(しゃべ)ったら? あっ、あんたの名前は? 私はユウ」


「えっ? 俺はシン」


シンは完全にユウのペースに流されて、思わず自己紹介をしてしまった。


後ろで、ショウタはそんなシンの姿を見て笑っていた。

何も言えぬまま、シンは呆然(あぜん)としていた。


「あんたはなんて言うの?」


「俺か? 俺はショウタ。よろしくな。おいシン、なにか話せば? こんなおもろい女いねぇべ」


「別に話すことなんかねぇし」


そう言うと、シンは定位置のブロックに座り込んだ。


「ガキだなぁ、金髪似合ってないよ。あっ、隣座っていい?」


ユウは勝手にシンの隣に座り込んだ。

なんでこんな状況になったのかわからなかったが、シンもユウのペースに乗せられて、少しずつ話を始めていた。


あんなにムカついた数時間前が嘘のように、1時間に1本しかない電車を3本もやり過ごし、くだらない話を続けた。


お互いのこと、今自分がどんな環境なのか、何が好きで、どんなテレビをよく見るか、まで。

不思議と会話が途切れることはなかった。

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