第46話



115 名無しの探索者

天草かこれ!?


116 名無しの探索者

は? ちょっと待て、何で天草が101階層の魔物を一瞬で倒せるんだよ?

こいつ、そんな強かったのか!?


117 名無しの探索者

天草? おい、何がどうなってんだこれ!?


118 名無しの探索者

な、何でこんなに強いの?

強いけど、サボってたってこと?


119 名無しの探索者

サボってたんじゃないってことじゃないのか、これ

今までの話が全部ひっくり返るんじゃねこれ?

天草の話、全部本当だったってことだろ!?

協会は何してたんだ?


120 名無しの探索者

天草、すげぇな……あんな魔物たちを一瞬で倒しちゃったよ

どうなってんだ、マジで


121 名無しの探索者

桐生様の配信、ワケワカメ……

天草はなんでここに来たんだ?


122 名無しの探索者

いや、ちょっと待て……マジで信じられねぇ


123 名無しの探索者

天草が501階層があるとかいうホラ吹いてるとか前に言ってるやついたけど、これもマジじゃねぇのか?

協会は何してんだ?


124 名無しの探索者

天草を否定していた奴ら頭おかしすぎるだろ

……協会の情報鵜呑みにしてんじゃねぇよ!


125 名無しの探索者

>>124

協会が発表したことなんだから信じるだろ……

これ、協会が完全に悪いよな?

天草の報告を嘘だとか言ってたけど、結局全部真実だったってことだろ?


126 名無しの探索者

マスコミもひどすぎる。ずっと天草を無能扱いしてたのに、なんも知らねぇで叩いてたってことじゃん!


127 名無しの探索者

桐生様もビックリしてたよな、天草強すぎワロタ

配信見てる俺らも何が起こってるのか分かってない状態なんだが……

誰か解説頼む


128 名無しの探索者

協会、マジでどうなってんだよ

ちゃんと調査してたんじゃなかったのか?


129 名無しの探索者

お前ら手のひら返すの早すぎだろww

さっきまで天草叩いてたくせに、今は協会叩きかよww

ま、俺も勝ち馬に乗らせてもらうわ

協会のゴミカス死ね

税金無駄遣いのクソ組織なんて解体して、どうぞ


130 名無しの探索者

いや、でもよく考えたらこれ全部協会の責任じゃね?

あいつらが天草を信用してれば、こんなことにならなかっただろ


131 名無しの探索者

これ、天草を降格させた協会がヤバいんじゃね?

しかもテレビも、マスコミも全部嘘ばっか流してたし

やっぱり協会が腐ってるってことだろ?


132 名無しの探索者

テレビで散々天草を馬鹿にしてたコメンテーターとか、今頃顔真っ赤だろうなww


133 名無しの探索者

今までの報道全部ウソってことでしょ?


134 名無しの探索者

これ協会の奴らもやばすぎ

全員調査したほうがいいだろ……誰がこんな結論出したのか発表しろ、マジで


135 名無しの探索者

やっぱ協会が悪いわ

今回の騒動も、全部天草を無視してたせいじゃん。

責任取れよ


136 名無しの探索者

マスコミも無能すぎるだろ。家族まで追い詰めて、結局何も知らないで叩いてただけじゃねぇか!


137 名無しの探索者

もう、これから天草叩いてた奴は全員謝れよマジで


138 名無しの探索者

これ、天草が神野町の活性化についても色々発言してるし、神野町の探索者たちも言ってる記事とかあるな。全部、ホラ吹きとか洗脳とかで処理されてるけど……これ全部事実なんだろ


139 名無しの探索者

天草の実力があるって俺は知ってたやでー





 ――晴人がダンジョン攻略に向かっているときだった。


 由奈と凛は撮影の準備を行っていた。

 協会への注目が集まるこのタイミング。

 ここで、例の探索者協会での音声データを世に出そうと考えていたからだ。


 由奈は持っていたスマホを凛へと向けると、彼女は恥ずかしそうにカメラへと視線を向ける。

 凛の手元には一枚の紙が握られている。由奈が急ごしらえで作成した台本だ。


 といっても、もともと話す内容自体は決まっていたので、そこまで大きな問題はなかった。

 初めての配信に緊張しているのは由奈も良く分かっていたので、凛に声をかけた。


「……とりあえず。一度、練習のつもりでやってみる?」

「う、うん……」

「じゃあ、緊張しなくていいからね。行くわよ? はい、どうぞ」


 由奈はそう言って、スマホのカメラで撮影を始めた。

 撮影音を聞いた凛がびくっと肩をあげ、それから手元の紙を見ながら話し始める。


「えっと、私は……探索者協会の……その、あの、違う……私は、探索者協会で……違う……」


 言葉に詰まり、カンペをもう一度見直すが、次の瞬間、緊張がピークに達したのか、噛みまくりながら言葉を絞り出す。

 しかし、何度もミスしていた。

 その結果、由奈はすぐにある判断を下した。


「協会が……えっと、……え? ……無理」

「うん……そうね。配信だと絶対無理だから……動画にしよっか」

「……動画?」

「そうよ。そっちの方がたぶん凛には合ってるわ……って思ったんだけど、この前の新年の撮影とかってうまくやってたわよね?」

「あんなどうでもいいのは別に」

「……じゃあ、今回はなんでこんなに緊張してるのよ」

「……だって……私の結果次第で、晴人に凄い……影響するかもしれないから」


 由奈は凛のその反応に一瞬固まったが、すぐに納得した。


「確かに、そうかもしれないわね。でも、あのテレビの時みたいに淡々と事実だけを伝えればいいから」

「……事実だけ?」

「そうよ。自分の思ったこと、どうなってほしいのか。……あたし、あんまりよく見てなかったらけどあの時の凛ってそんな感じだったでしょ?」

「……うん」

「その時と同じ感覚でやればいいわよ。あと、動画なら最悪、カット編集しまくればうまくしゃべってるようにできるしね」

「……うん、分かった」


 こうして、配信は早々に諦め、代わりに動画制作という形で進めることになった。

 由奈は撮影した映像を編集し、告発動画としてまとめあげた。

 時間をかけて慎重に作られたその動画は、公開するタイミングを計り、世の中へと放たれた。

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