第5話

 もちろん、幼馴染の草木まことと一緒に帰宅するという事は初めてではない。

 それはあの長い長い輪廻の事を加味しなくても、それ以前から彼女とは一緒に帰宅するという機会は幾度としてあったのだ。

 伊達に幼馴染をしているわけではないのだ。

 多分、義妹の高田ゆかりよりも一緒にいる時間が長いかもしれない……なんて言ったらきっと二人とも怒るかもだけど。

 実際、これまでずっと同じ教室で時間を共に過ごしてきたので、割とその発言自体は的を射ているかもしれないのであった。


「というわけで、ラーメンを食べに行こう」


 ……だから、というわけではないが。

 彼女がラーメンの事をとても好いている事も俺は知っていたし、なんなら親からお小遣いをもらうようになってから彼女と一緒にラーメンを食べに行く事は結構あった。

 彼女、穏やかで柔和な笑顔を浮かべる癒し系な見た目をしている割にがっつり系のラーメンを食べるのが好きだったりしていて割とギャップである。

 野菜マシマシニンニクマシである。

 いや、ニンニクは本気でラーメンを味わうときにしかトッピングしないのであったか。


 そんなわけで、彼女と一緒にやってきたのはラーメン食堂「日曜」。

 学校よりもどちらかというと家からのほうが近いという位置にあるラーメンであり、知る人ぞ知る名店といった感じでまこと曰く「キテルネ」な感じのラーメン屋なのであった。

 

「らっしゃいませー」


 どことなく適当な挨拶を聞き流しながら俺達はまず食券を購入することにする。

 俺は――醤油ラーメン普通盛り、770円也。

 それを見てまことは何かを言いたげだったが、しかしそこでは特に何かを言うわけでもなくその場から退いた俺の横で食券……家系豚骨……特盛?


「え」

「いいからいいから」


 彼女にしては珍しいチョイスだったし、ていうかそれ以前に彼女はそんな特盛サイズを食べられるのだろうか?

 そう思ったが彼女はずんずん移動を開始してしまい、俺は仕方なしにその後を追いかける。

 店員に食券を渡し、席に着いてから数分。

 普通サイズの醤油ラーメンと、明らかに量が多い豚骨ラーメンが運ばれてくる。

 やっぱりこれ、食べきれないんじゃないか?

 

「いたたきだます」


 ……とりあえず、彼女も何か考えがあってそれを購入したのだろう。

 それ以上にラーメンは時間が経てば伸びてしまうので俺は急いで食べようと思い箸を持つ。

 そうして食べようとしたところで、そこでまことが俺の顔をじっと見つめていることに気づいた。


「ど、どうした?」


 その問いに対し、彼女は何か確信を持った表情を浮かべていた。

 何か、気づいたことでもあったのだろうか?

 

「ねえ、侑くん」


 彼女は、どこか――そう、痛々しいものを見るかのような、そんな表情を少しだけ覗かせつつ。

 俺に、そのように尋ねてきた。




「侑くん、好きなラーメン忘れちゃってるでしょ」

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