第9話・夏だ!山だキャンプで百合盛り……真夏の夜は百合の誘惑でいっぱい〔昼間編〕

 夏……日差しの中で黄色く揺れるサンフラワー向日葵畑、百合乙女たちも開放的な季節に色めき立つ──夕夏たちは、マシュマロ女史の提案で、山荘に避暑で来ていた。

 

 山荘の開けた窓から外を見た夕夏が、驚きの声を発する。

「すごい、バンガローやキャンプ場も見える……あっ、海もある」

 マシュマロが露出させた、乳牛乳房を夕夏の背中に押しつけて言った。

「うふふふっ、山荘から見える敷地は全部、あたしの所有地なんですよ……その中には松茸山もありますぅ」

「凄すぎる」

 振り向いた夕夏は、マシュマロの乳首を口に含んで母乳を吸った。

 すでに、夕夏にはマシュマロの母乳を飲むコトに抵抗が無くなっていた。

 母乳を吸われながら牛刀 マシュマロが言った。

「週末を山荘で過ごすのもいいですけれど……せっかく、貸し切りのキャンプ場があるのですから、みんなでキャンプを楽しみましょう」


  ◇◇◇◇◇◇


 すでに張られていたテントやタープの下で、思い思いのスタイルでくつろぐ百合女たち。

 ハンモックで揺られながら、スマホの画面を眺めていた夕夏の所に、サンダル履きで裸の愛娜が半分泣きべそでやって来て言った。

「ピピピ……ご主人サマ、裸で林の中を歩いていたらやぶ蚊に刺されてしまいました……痒いです」

「だからなんで、脱ぐ? 服を着て虫よけスプレーしなさい」

「ピピピ……あたしは、アンドロイドなので服は必要ありません」

「はいはい、もう好きにして」


 マットが敷かれたテントの中では、シュラフ寝袋から角頭を出したマキナが転がりもがいて夕夏に助けを求めていた。

「〝ぴえ~ん〟夕夏助けてくれ……裸で寝袋に入ってみたら角が引っかかって出られない〝ンゴ〟……一緒に裸で寝袋の中に入って百合〝にゃんにゃん〟で〝許してちょんまげ〟の〝マジ卍〟」

 夕夏はマキナの救いを求める声を無視した。


 ビニールシートが敷かれた場所では、詩南の冷やしたスイカ割りがはじまっていた。

 両目を閉じて木刀を構える詩南が呟く。

「秘剣……心眼百合剣」


 木刀一閃、見事にスイカが割られる……横に。飛び散ったスイカの欠片とヘルメットのようになったスイカの上部が狙ったように夕夏の頭にかぶさる。

 ヒクヒクと引き攣った笑みを浮かべながら、夕夏が言った。

「あっ、スマホの電池残量が減りわずか……誰が充電させてください」


 梨絵がサツマイモの根のように、連なった数個の充電器を取り出して言った。

「夕夏、充電器ならここにありますよ」

「いや、梨絵にスマホを預けると、スマホの中に盗聴器を仕込まれそうだから……他の人で頼みます」


 結局、マシュマロがソーラー充電器を貸してくれて、さらにキャンプ場に設置した簡易シャワールームで、夕夏の体に飛び散ったスイカ汁を洗い流すコトを勧めた。

「うふふっ……衣服は近くのコインランドリーで洗ってきますからぁ……夕夏さんはシャワールームの脱衣場に用意した、水着を着てください」


 言われた通り、夕夏がシャワールームの個室脱衣場に入ると、タオルを持ったススキが待っていた。

「夕夏お姉サマ、ご一緒します……お背中を洗い流しま」

 ススキが言い終る前に、夕夏はススキを外に放り出す。

 温水シャワーで、甘い香りのスイカ汁を洗い流した夕夏は、ビニール袋に入ってカゴの中に置いてあった水着を見て絶句する。

「着れるか……こんな水着」


  ◇◇◇◇◇◇


 シャワールームから出てくる夕夏を、百合女たちはスマホのレンズを向けて待ち構えていた。

 下を向いてワナワナ震えている夕夏が身に付けているのは、極小のハイレグ・レオタード水着だった。

 乳房は▲の三角眼帯型で、お尻の山が丸見えのGストリングバック、股間に喰い込んだ布地は細い紐で首から吊ってある感じだった。

「夕夏お姉サマ、素敵です」

「これは、映えるな」

 夕夏が呟く。

「こんなの、裸と変わりないじゃない……どこから、こんな過激な水着見つけてきたのよ……まぁ、裸でいるよりマシだけれど」


  ◇◇◇◇◇◇

 

 小一時間後──ビーチチェアに過激水着で座っている夕夏の目前で、夕食を何にするかの言い争いがはじまっていた。

 言い争っているのは、迷彩服を着た巫女とキノコや植物の図鑑を手にした星美だった。

 星美が言った。

「星美の頭の中に、宇宙からのメッセージで、夕夏さんが食べたいのはバーベキューだと通信がありました。だから、夕食はバーベキューで決まりです……お肉とか海鮮の食材は、だいたい用意してきました」


 巫女が反論する。

「夕食がキャンプで望んでいるのはカレーだ……わたしが最高のキャンプカレーを夕夏に作る」

 迷彩服姿の巫女が、堂々と自己主張する。

「スパイたるもの、サバイバルの訓練も積んでいる……過去に劇団員の仲間と三日三晩、山中をさ迷った経験もある」

 巫女の話しを聞いて夕夏は。

(それって、遭難って言うんじゃ?)

 そう思った。


 そして、巫女と星美の会話は、変な方向へと進んで行く。

「じゃあ、夕夏さんが美味しいって言ってくれた夕食を作った方が……夕夏さんを自由にしてもいいというコトで」

「料理勝負か、望むところだ」


 頬杖をして聞いていた夕夏の頬杖が、ガクッとコケる。

「あたしを、勝手に百合女の勝負に巻き込むな! 見たところ、食材少ないみたいだけど……それで、どうやって勝負するの?」

「もちろん」

 星美と巫女が同時に言った。

「現地調達です」


  ◆◆◆◆◆◆


 数時間後──山から巫女と星美が戻ってきた。

 少しボロボロになった星美が言った。

「食材集まりました……途中で森のクマさんとか、森のイノシシさんに遭遇しました」

 巫女も蠢く布袋を夕夏に見せて言った。

「苦労したけれど、なんとか食材をゲットした……これから、調理に入る」


 星美が鼻歌混じりに、採取してきたキノコを金串に刺していく。

 不安を感じた夕夏が星美に訊ねる。

「そのキノコ大丈夫?」

「虫さんがかじった跡があるから、大丈夫でしょう」

「いやっ、虫が食べたキノコを人間が食べても大丈夫という保証はどこにも……」


 夕夏に背を向けた巫女は、なにやらブツブツ言いながら食材の調理をしていた。

「まずは、頭を切り落としてと……こら、暴れるな! 生命力強いな、首を切り落としても動いている……山で何を食べているのかわからない内臓を取って、皮を剥いで……骨を抜いて細かくブツ切りにして鍋に放り込んでと……もう一匹の食材も……あっ、一匹逃げた」

 夕夏は動物の断末魔の声を聞いて、青ざめた。


 星美のバーベキューと、巫女のキャンプカレーが完成した。

 夕夏の目には二つとも、モザイクがかかった料理に映った。

 巫女が皿に盛ったカレーを夕夏に差し出す。

「食べてくれ……わたしの夕夏に対する愛情を隠し味に入れた、特製キャンプカレーだ」

 恐る恐る口にカレーを運ぶ夕夏。

 一口食べて夕夏が言った。

「普通に美味しい……少し細い骨が多い肉が入っているけれど、これなんの肉?」

「気にするな、山のウナギやハモだと思って喰え」

「山の……ウナギ?」

 カレーを食べながら巫女が続けてしゃべる。

「げっ歯類は、南米の国とかではポピュラーに食べられている食材だ……美味いだろう」

 青ざめた夕夏は、キャンプ場の隅の木の裏でリバースした。


 金串にキノコが刺さったバーベキューを食べながら、星美が言った。

「まったく、夕夏さんに変なモノを食べさせて……その点、星美が採ってきた色鮮やかなキノコなら大丈……」

 星美の顔色が青ざめて、夕夏と同じようにリバースした。

 

 リバースから戻ってきた夕夏に、金串に刺さった食べかけのキノコを差し出した、最近影薄キャラの由比が言った。

「夕夏……このキノコ食べてみて、美味しいから」

「由比まで、イヤよそんな得体が知れないキノコ」

「いいから、食べろぅ……ハァハァハァ」

「な、なにを……おごっ?」

 顔色を上気させて、興奮したように息が荒い。明らかに様子がおかしい由比が、強引に夕夏に星美が山で採ってきた、キノコを食べさせる。

 キノコを呑み込んだ過激な水着姿の夕夏の体が、百合発情して熱くなる。

「由比……」

「夕夏……」

 新種のキノコ【百合茸】の影響で、もう冷静な判断ができなくなった夕夏と由比が抱擁ハグしてディープなキスしているのを、キャンプカレーを食べている他の百合メンバーは、不思議な感覚で眺めた。

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