第8話・まだまだ続くよ花見の宴と後日談……百合女が大暴走
マシュマロがマキナに言った。
「では、改めて……マキナさんを、花見の宴に招待しますぅ……参加してください」
「うむっ〝許してちょんまげ〟だな〝MK5〟マジでキレる5秒前にならなくて良かった〝マジ卍〟」
魔王妄想コスプレイヤーで死語の世界を生きている、マキナとその
マキナと一緒に来た、奇妙なメイクをしたメイドは夕夏の隣に座った。
静かに飲酒をしているメイドに、夕夏が訊ねる。
「あたしは乙女坂 夕夏……個性的なメイクですね」
「コスプレーヤーの『リリン』です……通り名は『リリスの娘』……このメイクはなんでも死語で〝ヤマンバ〟メイクと言うらしいです……マキナ先輩の話しだと〝ガングロ〟と、どう違うのかわからないですけれど」
リリンが、マキナに聞こえないように小声で夕夏に囁く。
「あたしだって、こんな絶滅種のヤマンバメイクしたくはないんですよ……道を歩いていたら、危うく捕獲されて動物園の檻に入れられるところでした」
「それじゃあ、どうして死語のメイクを?」
「マキナ先輩が、ヤマンバになったら仕事回してくれるって言ったから……アイヌの〝トイポクンオヤシ〟って知っていますか?」
夕夏が、いきなりの方向転換した話題にキョトンとした顔をする。リリンはヤマンバの顔で話し続ける。
「トイポクンオヤシはアイヌの妖怪で……地面の中に潜って、メスは二枚貝のような性器を、地面の上に出しているんです」
「はぁ?」
「オスのトイポクンオヤシは、キノコのように性器を地上に……あたしの夢は、いつの日か地面に潜って〝トイポクンオヤシ〟のリアルな妖怪コスプレしてみたい! あたし、妖怪専門のコスプレーヤーなんです! トイポクンオヤシになりたい」
夕夏は、やっぱりコイツも変態百合女だと思った。
リリンと夕夏のところに、アルコールが入ってほろ酔いのマキナがやって来て二人の肩を抱えるように抱く。
「なあ~に、女二人でコソコソ話しているのよぅ……マキナのお姉さん〝激おこプンプン丸〟になっちゃうぞ」
マキナが夕夏の頬をつかんで、自分の方に向けさせて言った。
「夕夏、マキナとキスしよう……これは〝あたり前田のクラッカー〟」
そう言うと、夕夏の許可も得ないままに、マキナは強引に夕夏の唇を奪った。
「うぷッ? うううぅぅぅ!」
数秒間の頭の中が、空白の後に、我に返ってキスをされながら抵抗する夕夏。
魔王にキスをされている夕夏を見て、いきり立つ百合女集団。
「ずるぅぅい! あたしも、夕夏お姉さまとトイレで連れキスを」
「夕夏どのの唇を、本人の承諾も無しにいきなり奪うとは……言語道断、魔王成敗してやる!」
「ピピピ……解析不能、ご主人サマからの、繊細な指先を使った、下腹部の緊急メンテナンスを要する」
「星美の頭の中に、宇宙からのメッセージが届きました……これから、星美は夕夏さんと百合エッチなコトをしないといけません」
メチャクチャな百合たちの、大騒ぎに白目を剥いた夕夏は気絶した。
◆◆◆◆◆◆
花見の宴から数日後──河の土手道を空を見ながらフラフラ歩く、夕夏の姿があった。
薄っすらと海を浮かべた夕夏は、白い雲の間から見える昼間の月を指差して呟く。
「白い
花見の宴でマキナに息が止まるような濃厚なキスをされて、気絶した夕夏の意識が戻った時──花見は終了していて、夕夏はブルーシートの上に寝かされていた。
後片付けをしている妄想百合女たちの、夕夏をチラチラ見ている態度は変だった。
全員が意味ありな笑みを浮かべていて、ある者は顔を赤らめていた。
夕夏の衣服も、どことなく乱れた痕跡があった。
(なに? なにがあったの?)
特に夕夏が気になったのは、近づいてきた梨絵が夕夏の
「夕夏が、
その言葉に夕夏は戦慄した。
(気絶している間に、あたしの体に百合女たちは、何をしていたの? 誰か教えて)
弄ばれた……それは、確実なようだった。問題はどんな弄び方をされたのか? だった。
「考えれば、考えるほど頭の中が真っ白になる……段々と変な百合に染まっていく」
土手道を歩く夕夏の前方から、雪の結晶柄の着物を着た女性がこちらに向って歩いて来るのが見えた。
見覚えがあるその顔は、白塗りメイクをしていた……妖怪コスプレーヤーのリリンだった。
アイスキャンデーを食べながら歩いてきた、リリンは夕夏の前で立ち止まると、夕夏に向って息を吹きかけながらさらに近づいて来る。
顔の間近まで近づいて息を吹きかける、リリンが言った。
「ここで見たコトは、他言してはなりません?」
「なにやっているの?」
「見てわかりませんか妖怪〝雪女郎〟です……雪女とも言いますが〝ツララ女〟でもいいですよ」
「あたし、妖怪には詳しくないから」
「ひどい、時間かけて白塗りしたのに……アイスキャンデー食べますか?」
そう言って一本目のアイスキャンデーを食べ終わったリリンは、胸の谷間から二本目のアイスキャンデーを取り出して夕夏に差し出す。
「どこに、アイスキャンデー入れているのよ! 人肌のアイスキャンデーなんていらない!」
「まあ、そう言わないで……胸の谷間にまだ隠れているかも知れませんよ……アイスキャンデー探ししましょう」
リリンはいきなり、つかんだ夕夏の手を、着物の胸元に押し込んだ。
夕夏の指先が、保冷剤に触れる。
「ひッ! 変態!」
リリンの胸元から手を引っ込めた夕夏は、慌ててその場から逃げ出した。
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