第3話・次々と現れる変態妄想百合女たちが、夕夏をさらなる百合の世界へ……女人衆道学生剣士【矢羽 詩南】登場

 夕夏は、夢見心地の感覚でススキに手を引かれて、公衆トイレの広い個室に入った。

 後ろ手でカギを掛けながらススキが言った。

「あたし、たぶんこのトイレで死んだ幽霊なんです……だって、学校でも家でも存在感と生きている感覚がないんですから」

 ススキは夕夏のサラサラ髪を撫ぜる。

「夕夏お姉さまって、髪が長いんですね」

「みんなから、そう言われる」

 夕夏はススキの言葉に逆らえない状態になっていた。


「お姉さまは、スタイルもいいですし……格好いいです素敵です……あたし身長低い小柄な体型ですから、お姉さまみたいな女性に憧れます」

「ありがとう」

 微笑む夕夏。

 幽霊妄想のススキが言った。

「きっと、お姉さまみたいなカッコイイ方と百合っぽいコトをして満足できれば、あたし成仏できると思うんです」


 夕夏と向かい合って立ったススキが、スカートを持ち上げて下着を夕夏に見せる。

「夕夏お姉さまが攻めタチ……あたしが受けネコで、お願いします。ショーツの上から触ってください」

 命じられて攻め役にさせられた夕夏が、ススキの下着の上から手の甲を使って撫ぜる。

「あふッ……お姉さま、制服のボタンを外してブラジャーの上からちっちゃい胸を触ってください……あたしの名前を呼びながら、可愛いって言って」


 夕夏はススキの胸を繊維の上から触る。

「ススキ……可愛い」

「あぁ夕夏お姉さま素敵です……今度は下着の中に手を入れて、直接触って攻めてください……触りながらキスしてください」

 夕夏はブラとショーツの中に手を侵入させて、触りながらススキの薄いピンク色の唇に自分の唇を重ねる。

 妄想幽霊少女にキスをしながら、夕夏は震える体で思考した。

「んんんッ……(ヤバい、ヤバい、これ以上のコトを命令されたらヤバすぎる!)んんッ……ススキ」


 しかし、ススキはそれ以上の攻め指示はしなかった。

「ぷはぁ……気持ち良かったです。でも、まだ成仏できるほど満足はできていません、夕夏お姉さま……また、トイレで百合エッチしてくださいね♫」

 夕夏は幽霊妄想少女の言葉に、足から力が抜けてしゃがみ込んだ。


  ◆◆◆◆◆◆


 次の日──夕夏はウィンド・ショッピングで街をうろついていた。

(まだ、夢を見ているみたい)

 月霞 ススキとの公衆トイレでの秘密の百合行為。

(まさか、真っ昼間に人が来るかも知れない公園のトイレで、あんなコトをしていたなんて)

 夕夏の無意識に、熱くなった女のシンボル部分がキュンとなった。

 街を少し強めの風が吹き抜ける。

 木の葉が舞って、道の看板が少し揺れる。

 ある店の下を通った時、かなり強い風が吹いて、夕夏はスカートを押さえた。

 ふいに、女性の悲鳴と男性の声で。

「危ない!」

 と、いう声が聞こえ。頭上を見た夕夏は、留め具が外れて自分に向って落下してくる看板を見た。

 突然の出来事に体が硬直して動かない、夕夏の所に疾風のように走ってきた人影があった。

 その人物は、落下してきた看板を木刀の一閃で、夕夏から離れた場所に弾き飛ばした。


 スラッとした体型で、ふくらはぎが見えるカプリデニム〔七分丈デニム〕を穿いていて。

 裾を結んだシャツを着た女子大生に見えるポニーテール髪の女性が木刀を構えて、精悍せいかんな表情で立っていた。

 学生剣士の女子大学生が言った。

「危なかった、看板の留め具が緩んでいたらしい……あと一歩、遅かったら夕夏に看板が当たっていた……ケガは無いか? 夕夏」


 女性は学生剣士の『矢羽 詩南やばね しなん』と名乗った。

 自分の名前を知っていた詩南を見て、夕夏は直感した。

(この人も百合女? あたしが引き寄せたの?)


 とりあえず礼を言う夕夏。

「あ、ありがとう」

 詩南は、夕夏の脚をじっと見ている。よく見たら、かすり傷が夕夏の脚についていた。

「夕夏、わたしの家が近くにあるから行こう……キズ口からバイキンが入ったら大変だ」


  ◇◇◇◇◇◇


 夕夏は、強引にキズの手当てをしたいという詩南の言葉に押し切られて。

 詩南の家の、築数百年の武家屋敷に連れて行かれた。

 詩南の部屋で夕夏は、丹念すぎるキズの手当てを受けた。

 夕夏のスリ傷に包帯を巻き終わった、詩南が言った。

「これでいい、菌が夕夏の体に入って悪さをするコトは無いだろ」

 詩南は、スリ傷に包帯を巻かれた夕夏のスカートの中に手を入れてきて、今度は夕夏の太モモを擦る。


 これは治療行為ではないと、気づいた夕夏が声をあげる。

「な、なにやっているんですか!」

「他にもキズがあったら、大変だから」

「大丈夫です、そんな場所にキズはありませんから」

「そうか……」


 七分丈のデニムを穿いた詩南が、いきなりたたみの上に仰向けに寝転がって、透き通る声で言った。

「さあ、脱がしてはじめてくれ」

「はじめるって何を?」

「梨絵から聞いていなかったのか? てっきり知っているモノだとばかり思っていた……最初から説明しないといけないかな?」

 詩南は、自分の家の歴史を語りはじめた──なんでも、矢羽家は戦国時代に弓矢と剣術で発展してきた、女系剣術の由緒正しい家系らしい。


「我が矢羽家は、男の武将が男色の衆道を武芸の嗜みの一つとしてきたのに対抗して女性同士の〝女人衆道〟を修行の一つとしている……わたしも、矢羽家を継ぐ者として女人衆道を極めなければならない」


 詩南は、カプリデニムの股間を指差して言った。

「女人衆道の初めての相手に、わたしは夕夏を選んだ……さあ、デニムのベルトを緩め、ファスナーを下げて脱がしてくれ」

 りんとした雰囲気に呑まれた夕夏は、横たわった詩南のデニムのベルトを緩め、ファスナーをジジジッと下げる。

 純白のシルクの下着が下げたファスナーの下から現れる。

「普段なら、女性用のフンドシなのだが。初めての夕夏を驚かせてはいけないと思って……今日は現代下着を選んだ」

 詩南がシャツの裾結びを解きながら言った。

「そのまま、デニムを脱がして下着を膝まで下ろしてくれ。ちなみに、わたしの下の毛は剣術修行の妨げにならないように剃ってある」


 雰囲気に呑まれていた、夕夏は詩南の『剃っている』の言葉に、我に返って。

 慌てて荷物を持って部屋を飛び出した。

「し、失礼しました! キズの手当てありがとうございます!」

 屋敷を飛び出した夕夏は走りながら。

「危ない、武家屋敷の独特な雰囲気と、詩南の女人衆道への強い気持ちに押されて、危うく女性同士で初体験をしてしまうところだった」


 立ち止まった夕夏は、首をかしげる。

(女同士で初体験? もしかして、あたし酔った勢いのあの時のホテルで、梨絵と初体験しちゃっている? ウソぅ)

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