第2話・夕夏、百合の深みにハマる……幽霊妄想少女【月霞 ススキ】登場

 翌日──会社を休んだ夕夏は、朝から必死にショルダーバッグの中を探していた。

「無い! 無い! やっぱり無い! 携帯スマホが無い!」

 思い当たるのは、やはり昨夜の梨絵に体を弄ばれた、ホテルの部屋。


(やっぱり、あの時にスマホ無くしたんだ……どうしよう)

 夕夏が真っ青になっていると、アパートの部屋のドア郵便受けにコトッと、何かが差し込まれる音がした。

 ドアの所に行ってみると、切手を貼ってない薄ピンク色の封筒が入っていた。

 封筒の中の手紙には、こう書いてあった。

『忘れ物を預かっています。手紙に書いた住所に、できれば指定した時間で来てください──李・梨絵』

 そう書かれていた。


 ドアを開けて通路を見ても誰もいなった。

 遠方の住宅街の道路に目を向けると、自転車に乗って走っていく女の姿が見えた。

(まさか、スマホのメモリーに入っていた。あたしの住所を見て、直接手紙を届けたの? なんのために?)


  ◆◆◆◆◆◆


 夕夏は手紙に書かれていた住所にある、一戸建ての家に到着した。

「結構、立派な家」

 玄関プレートには、英字で『李・梨絵』と彫られていた。

(一人で住んでいるの?)

 夕夏は、少しためらってからドアのチャイムを押した。

 数分の間の後に、鍵が開けられたドアが開き、嬉しそうな梨絵が顔を覗かせる。

「いらっしゃい、待っていたよ……さあ、入って、あたしの他には誰もいないから」


 リビングに通されると、テーブルの上に夕夏のスマホが置いてあった。

「変な操作はしていないよ、夕夏の住所を知りたかっただけ……持っていっていいよ」

 梨絵がペットボトルに入った、ジャスミン茶をコップに注いでスマホの確認をしている夕夏の前に差し出す。

「ノド乾いたでしょう……飲んで」

 夕夏は、なんの疑いも抱かずにジャスミン茶を飲み干して、スマホをショルダーバッグに入れると立ち上がって梨絵に礼を言う。

「それじゃ、スマホ返してくれてありがとう」

「もう、帰るの……ゆっくりしていったら。そうそう、もう一つ夕夏がホテルの部屋に忘れたモノを、寝室のベットの上に置いてあったの思い出した」

「あたしの忘れ物?」

 夕夏は梨絵に案内されて、梨絵の寝室に入る。

「どこに、あたしの忘れ物が……あっ」

 急激な眠気にベットに倒れ込む夕夏。

 薄れていく意識の中で、梨絵の声が聞こえた。

「忘れ物は、夕夏を寝室に連れ込むための口実……ジャスミン茶に入れた睡眠薬の効果が夕夏の体に現れるのに、少しタイムラグがあったわね……よしよし、これで夕夏の体のデータが取れる」


  ◇◇◇◇◇◇


 次に夕夏が意識を取り戻すと、ベットに仰向けの格好で寝かされ、手首をベットの頭柵にモフモフの手錠で拘束されていた。

(なにこれ?)


 よく見ると両足も少し開いた格好でベットの足側柵に拘束されていて。

 シルクのブラとシルクのショーツだけが残る、下着姿に剥かれていた。

 ベットの近くに立って、白衣コートを着て細目で夕夏を眺めている梨絵の姿があった。


 李・梨絵が言った。

「お目覚め? よく眠っていたわね……おかげで、無抵抗な夕夏の服を脱がして楽しむ時間も作れた……ふふふっ」

「あたしを、どうするつもり? いったい何が目的なの?」

 梨絵が近くに置いてあった、オカルトとか宇宙人が載った怪しい本を手にして言った。


「あたしは、この地球にはすでに、人間そっくりな宇宙人や高性能な人間そっくりなアンドロイドが完成して、人間社会に紛れ込んでいると信じている」

「? なにそれ?」

「これから、夕夏の体を調べて宇宙人なのか、アンドロイドなのかを確かめる」


「なに、言っているのあなた……頭おかしいんじゃないの?」

「抵抗してもムダよ、じゃあ、はじめましょうか……最初はその胸が、本物の胸かどうかを調べる」

「本物の胸よ! 豊胸手術なんてしていない!」


 梨絵はベットに手足を拘束した夕夏のフロントホックブラのホックを外して。

 形がいい夕夏の乳房を露出させると、手と舌を使って夕夏が、宇宙人なのか? アンドロイドなのか? の確認作業に移った。

「これって人工物? 本物? よくできているわね」

「変態! あなた変態。はうぅ、やめてぇ変なコトしないでぇ……引っ張らないでぇ」


 梨絵の指先は、シルクのショーツを撫で回す。

「やっぱり、下着の上からだと敏感な部分の構造はわからない……アンドロイドだったら、奥の方にスイッチがあるかも知れない……直接触って確かめなければ……ふふふっ」


 梨絵の指先が布地の中へと侵入を開始して、夕夏は。

「あうッ」と声を発して、背中を反らせて浮かせた。


  ◆◆◆◆◆◆


 梨絵に肉体を百合的に弄ばれ、解放されたのは午後になってからだった。

 疲れ切ってよろめきながら、自分の家へと戻る夕夏はスマホの画面を見る。

 保存されている画像の中に、いつも間にか自撮りした梨絵の胸部露出画像と電話番号が残っていた。

(なに、この女……自分の露出画像、人のスマホに残して)

 歩きながら夕夏は、梨絵が別れる時に言った言葉を思い出す。

「これで夕夏は、あたしに恥ずかしい場所のスイッチを押され〝百合女を引き寄せる特殊能力〟が覚醒しました」

(百合女を引き寄せる? オーラみたいなもの?)


 歩道橋を渡っていた夕夏は、歩道橋の上で衣服を脱いでいる女子高校生と遭遇した。

 最後のショーツの縁に指を引っ掛けて、腰を屈めた少女に慌てて声をかける夕夏。

「ちょっと、あなた何をしているの!」

 最後の一枚を脱衣しようとしていた小柄な少女が、驚いた顔で夕夏を見る。


「お姉さま、あたしが視えるんですか?」

「普通に見えているけれど」

 夕夏は周囲を見回して、撮影の類で無いのを確認する。

「とにかく、服を着て……見ているこちらの方が、恥ずかしくなるから」

 小柄な少女は、歩道橋の上にたたんで置いてあった、制服を着衣すると。

 いきなり、夕夏の胸をタッチしてきた。

 小柄な少女に触られて驚く夕夏。

「な、なにするの? 人の胸を触って」

 首をかしげながら、少女が言った。

「変だな、腕が体を通過しない……もしかして、この人があたしを成仏させてくれる。お姉さま……お姉さま、お話しがあります」

 少女は自分を『月霞つきかすみ ススキ』と名乗って、公園にある公衆トイレを指差す。


「あそこのトイレの広い個室に、一緒に入ってください……夕夏お姉さま」

「いやよ、なんであたしが女同士でトイレの個室に?」

 この時、夕夏はなぜススキが自分の名前を知っているのか、気づかなかった。

 ススキが小さなタメ息を漏らす。

「そうですか……素直にトイレに一緒に入ってもらえれば、こんな手荒な方法はしなくて済んだのに」


 そう言うと、ススキは夕夏の顔に向けて香水のようなモノを、プッシュした。

 途端に夕夏の意識は催眠術にでも、かかったようなぼんやりとした状態に変わる。

「な、なにを顔にかけたの?」

「化学研究所に勤めている、李・梨絵さんから分けてもらった。女性を半催眠状態にする試薬です……半信半疑でしたけれど、成功したみたいです」

「李・梨絵って……まさか、あなた百合女!」

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