【あたしが出会う女がなぜか百合ばかりで、このままだと百合ハーレムに組み込まれてしまいそうです】

楠本恵士

第1章・百合女子はあなたの隣にも確実にいる

第1話・男が欲しい、女はいらない……それなのにナゼ?

 休日の夕方──二十歳代の会社員、『乙女坂 夕夏おとめざか ゆうか』は、同僚の『式条 由比しきじょう ゆい』を相手に、バーのカウンター席で酔っ払って男運の悪さを嘆いていた。


「だからさぁ、あたしって男運が悪いのよ……今まで、つき合った男にロクなのがいないわけ……ちょっと聞いている? 由比」


 カウター席に座った由比は「はい、はい、わかる、わかる」といった感じで軽く、横に座った酔っ払い女をあしらう。

 バーのカウンターに顔を伏せた夕夏は、愚痴る。

「どこかに、いい男いないかなぁ」


 その時、由比のスマホが着信を知らせ、由比が通話する。

「うん、今バーにいる……すぐ行けるから、えっ? 今日の合コンで一人欠員、ドタキャンした女が出たから人数が合わない? そんな、急に頭数合わせの女がいないかって聞かれても……ん? ちょっと待って」


 由比は横で酔いつぶれ気味の夕夏を、スマホ片手に眺める。

 由比が夕夏に訊ねる。

「ねぇ、夕夏これから合コンあるんだけれど……行かない? 欠員が出ちゃって」

 顔を伏せたままの夕夏が答える。

「合コン……行くぅぅ」


「決まりね、あっ、もしもし……一人、補充できたから。これから、連れて行くね……うふふっ、楽しく合コンになりそう」

 

  ◇◇◇◇◇◇


 気がつくと夕夏は、見知らぬ場所で長テーブルを挟んで椅子に座らされていた。

(ここ、どこ? あっ、合コン会場かぁ)

 少し酔いが冷めてきた、夕夏は目の前にある椅子に座って並ぶ女たちを眺める。

 向かい合って座っている女たちの中には、由比の姿があった。


 夕夏が左右を見ると、見知らぬ女たちが同じように椅子に座って並んでいた。

(合コン♫ 合コン♫ 男どこ?)

 少しアルコールが残っている頭で、惚けて女たちを眺めている夕夏の耳に由比の声が聞こえてきた。


「それじゃあ、自己紹介も終わったことだし、恒例の細い棒状菓子ポッキーゲームいってみよう……まずはクジ引き、えーと、一番の女と六番の女が細い棒状菓子ポッキー


 二人の女が立ち上がって近づくと、互いの口に細い状棒菓子の端を咥えて、食べはじめて最終的にキスをした。

 一気に酔いが覚める夕夏。

(な! この人たち何やっている? 女同士でキスして??)


 次々とクジ引きで、ゲームパートナー決まる。

「四番の女と八番の女が、細い棒状菓子ポッキー……あっ、四番あたしだ」


 由比も小枝のような棒状菓子をポリポリ食べて、女性とキスをする。

「んッ……んんんッ」


 なにがなんだか、わからないまま硬直する夕夏。

(なに、なに、コレ? 女だけの合コンで、なにやっているの? 女だけの合コン? まさか、この合コンって百合!)


 夕夏の番がやって来て、強引に椅子から立たされた夕夏の前に、細い目で黒髪ミディアムヘヤーの女が対面で立つ。

 細目の女が言った。

「あなたが、ゲームのお相手? よろしくね」

 何かを言おうと開いた夕夏の口に、細い棒状菓子ポッキーが押し込まれる。

「んんッ……ち、ちが」

 夕夏が逃げる間もなく、細目の女は夕夏を強く抱き締めて……そのまま、夕夏の唇を奪った。

 夕夏、生まれて初めての女性との、ファーストキス体験だった。


 放心している夕夏の口に細目の女は、錠剤のようなモノを押し込んで、夕夏が吐き出す前に自分の口に水を含みながら言った。

「ご褒美の、お薬」


 再びキスで口の中に水を流し込まれた夕夏は、錠剤を飲み込み……そのまま意識を失った。


  ◇◇◇◇◇◇


 次に夕夏が意識を取り戻した時──夕夏は見知らぬ部屋のベットに仰向けで寝ていた。

 ゴージャスな天井照明、夕夏は自分がいつの間にか裸にされて。薄い寝具を裸体に掛けられているのに気づく。


 ドレッサーの前に裸体にバスタオルを巻いて、髪をブラシッシングしている細目の女の背中が見えた。

 鏡越しに細目女が言った。

「あなたの喘ぐ声、すごかったわよ……そんなにあたしの愛撫テクニック、気持ち良かった?」

 夕夏の方に向き直って細目女が言った。

「あたしの名前は、李・梨絵りー・りえ……母親は中華系女、父親は日本人」


 梨絵が意味深な笑みを浮かべる。

「あなたに飲ませた薬は、意識をぼんやりとさせて多少の自白効果がある、従順薬……薬の効果が効いている時の夕夏は、とっても素直でいい子だった。あたしと情報交換もしてくれた」


 青ざめる夕夏。

「なにをやったの……あたし、あなたとこの部屋で、いったい何をやったの」

「うふっ、楽しくて気持ちがいいこと……いっぱい、夕夏の秘密の場所も見ちゃった、夕夏はあんな所にホクロがあるのね」

 裸体までも薄桜色に紅潮させた夕夏は、裸のままラブなホテル部屋の、ドアへと走りロックされているドアノブをガチャガチャ動かす。


 梨絵が言った。

「ムダよ、休憩代を支払わないと開かないわよ……その裸のまま、通路に出るつもり? シャワー浴びて服着てからにしたら」


 梨絵に言われて、仕方なく夕夏は、行為が終わった体を梨絵と一緒に温水シャワーで清める。

 ボディソープを泡立てたスポンジで、体を洗っている夕夏に梨絵が言った。

「あなた、あたしの好みよ……近いうちにまた会いましょうね」


 夕夏が着衣して梨絵が休憩代を支払って、ロックが解除されたドアを開けた夕夏は、階段を駆け下りてホテルから飛び出した。

 赤や青のネオンで飾られたホテルを見て、青ざめた夕夏は。

(あたし……なんてコトを女性同士でホテルに入って……いやらしいコトを)

 人目を気にしながら、夕夏は足早にホテル街から離れた。

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