第14話 変身
タケルに魔法の練習をさせ、ある程度増えた魔素を吸収する事で余裕が出来てきたジーナが魔石の補充をする。エリザがやろうとしたら、「エリザちゃまがする必要は無いよ!」と止められたからだ。
だが、魔素が増えるにつれて電波が通らなくなり、テレビ放送やスマホなどの電波を使った伝達方法は使いづらくなってきていた。有線のテレビやパソコンには影響が無いため、通信手段としてそちらが主流になっていく。
「あ、パソコンに大学からメールが来てる。えっと、授業を再開するのか」
「いくら魔物の被害が減ったからって、まだ安全とは限らないよ?」
「まあ、お金が絡んでくる以上、どこからか再開の圧でもあったんじゃないかな。僕も単位が必要だから、あんまり大学の休みが続いても困るところだよ」
「大学? それって面白いの? 私も行きたい!」
エリザが、タケルの大学に興味を示す。
「中学生くらいにしか見えないエリザじゃ、すぐにバレるから無理だよ」
タケルが、適当にエリザが大学に行けない理由を伝えるが、エリザは別の答えを出す。
「見た目が変わればいいのね? じゃあ、これでどう?」
エリザは、魔力を使って自身の体を変え、見た目が20歳くらいの女性に変身する。
「えっと、この姿になるのは初めてだけど、口調はどうしたらいいのかな?」
エリザは、大人な女王モードとさっきの少女モードにしかなったことが無いため、中途半端な今の姿の場合、どうしゃべればいいのか分からなかった。
「エリザちゃま、普通に話せばいいんじゃないかな?」
「そう? なら、普通に話すわ。それで、この姿なら問題ないわよね?」
「大学にも人はいっぱいるし、今の混乱している状況なら少しくらい授業に混じってもバレないかもしれないけど、さすがに編入とかは無理だよ?」
「どんなところか見られればそれでいいわ。でも、面白そうならその時はまた考えるわ」
「だから、編入は無理だって。大体、授業なんて聞いても面白くないと思うよ? ほら、こんなのを学ぶだけだから」
タケルは、カバンの中から経済学の教科書を取り出しエリザに見せる。
「私の知識じゃ読めない漢字もあるし、理解しづらい言葉遣いが多いわね。でも、このくらいなら問題ないわ。辞書はある?」
「最近はパソコンでばかり調べるから、あるにはあるけど古いよ?」
タケルは、埃をかぶっている国語辞典をエリザに渡す。エリザは、それをぺらぺらとめくっていく。数分ほどで辞書を閉じる。
「ありがと。はい、返すわ」
「もういいの? 要らなかった?」
「ううん、もう全部覚えたわ」
「嘘っ!」
「エリザちゃまが嘘をつくわけないでしょ!」
「痛っ!」
タケルはジーナに叩かれる。魔物は人間と脳の作りが違い、判断能力はともかく、記憶能力は比較的高い。その中でも、エリザはダントツで記憶能力が高い魔物だった。
「それで、いつから行けるの?」
「今日が日曜日だから、明日からもういけるみたい。大学には被害が無かったのかな」
「それこそ、行けば分かるでしょ。それじゃあ、今日の予定はタケルの訓練とゲーム勝負でいいわね」
「あはは、お手柔らかにね」
すでにゲームでも全くエリザに勝てなくなっていたタケルは乾いた笑いで誤魔化す事しかできなかった。
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