第13話 脅威
「まだ数日しか経っていないけど、もう魔草が魔素を放出し始めているわね」
生命力の強い魔草は、すでに土に根を張り魔素を放出し始めていた。そのおかげで、魔物は落ち着きを取り戻し、人を襲わなくなり人里を離れて山の方へと向かう
ただ、その数日で被害を受けた場所も多く、ドラゴンが現れた国ではすでに街が一つ滅んでいる
また、軍隊を持っで魔物を排除した国では、すでに魔物の素材や魔石について研究が始められていた
知能の高いエリザの様な魔物は、最初から人とは関わらず、人気の無い場所に集まり集落を作ったりもしていた。遠からず、人間に居場所がばれ、交流するのか殲滅されるのかはまだ不明だ
「これで、タケルが多少魔力を使った程度なら魔石を集めなくても練習には困ら無さそうね」
街にはすでに魔物が居なくなってきていたが、猪の様な普通の動物は知能が低いためまだ暴れている
しかし、ただの動物なら普通に銃や重機による物理的な排除も可能なため、徐々に被害は減っていくだろう
「魔物も減ってるみたいだし、何に備えて練習するの?」
「確かに、弱い魔物は減ったかもしれないけど、弱い魔物は魔素があればすぐに生まれるわ。それよりも、知能が高く魔力も高い魔物が何を考えて行動するか、ね」
「そんなのいるの? ニュースにもなっていないけど」
「人間に見つかるわけ無いじゃない。高位の魔物ならジーナみたいに変身することも、幻影なんかでごまかすことも訳ないわ。私達みたいに言葉を話す魔物はまだ居ないでしょうけど、それも時間の問題ね。言葉を理解するなんて、魔法を使えばすぐにでも可能だし、知能自体高いものもいるし」
「そ、それじゃあ、この混乱はまだまだ続くって事?」
「それは分からないわ。自分から人間に接触しようっていう魔物なんてほとんど居ないんじゃない?」
エリザはそう言うが、タケルはエリザという自分に接触してきた魔物を実際に見ているため、簡単には安心できなかった。逆にエリザは、自分よりも弱い存在である人間に興味を示す魔物はほとんど居ないと思っている。
「エリザちゃま、テレビから色々と情報収集したよ。ほとんどは、見た事の無い生物が暴れてるっていうのばかりだけど、映像の中に高位の魔物も居たよ。これがその録画だよ」
ジーナはすぐに電化製品の操作を覚え、使いこなしていた。そして、ジーナがリモコンを使って再生した動画には、角の生えた筋肉がもりもりの巨体が映っていた。そして、どこかの国の軍隊と戦闘をしていた。
「こいつは、オーガキングかしら。……人を攫っている?」
「え、オーガって人を食べるの!?」
「何そのイメージ。人なんてわざわざ食べないわよ。私の世界に普通の人間なんて居ないんだから、食べた事あるやつなんて居ないと思うわよ。だから、目的はこの世界の情報収集ってところかしら? これは、思ったよりもやばいかもしれないわね」
エリザは、人間を攫ったオーガキングの狙いは、この世界の文明の理解と言語の理解だと判断する。実際、それ以外に得たいものは無い。いや、もしかしたらそれ以外に無いのかどうかも含めて情報を得ようとしているのだろう。実際、オーガキングの手下のオーガは、戦車砲の一撃で死なずとも大ダメージを受けているようだった。魔力が無いのに魔物にダメージを与えてくる人間を脅威に思い、その秘密を探ろうとしているのだろう。
「オーガキングに、人間は脅威にならないって思われたらどう行動するか分からないわ。侵略するのか、それとも不干渉……はないわね」
「そうだね、オーガって野蛮で狂暴だもん。絶対に戦いを挑むに決まっているわよ」
ジーナも、数日で慣れてきた魔女っ娘スタイルを駆使してぷんぷんと怒って見せる。
「そうね。だから、やっぱり戦う事を前提にタケルも鍛えた方が良いわよ」
「そ、そうだね……」
タケルは、身近に迫る危機を感じて身震いした。
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