第15話 side オーガキング

オーガキングと、付近に居た十何体の配下は、一緒に次元の裂け目に吸い込まれた


気が付くと、見た事も無い建物や生物が居た


「何が起こった?」


オーガキングは、配下のオークジェネラルに問う。しかし、オークジェネラルも答えを持っておらず、返答に困るだけだった


「情報収集が必要だ」


オーガキングは、筋骨隆々の見た目とは違い、慎重な性格だった。魔素が感じられなくなっていたので、無駄な魔力を使うべきでは無いと思い、配下を連れて移動する


オーガキングは、建築途中のビルを発見すると、配下に命令して中を調べさせる


「中はもぬけの殻です」


そのビルは、建築途中で建築会社が倒産したため、完成間近で放置されていたものだった


ライフラインは通っていないが、魔物であるオーガキング達にとっては関係が無いため、都合の良い建物だった


それから数日は、オーガキングはそこに引きこもり様子を見る事にした


ビルの高層から辺りを調べさせると、段々とあたりに人通りが戻ってきている事が分かった


耳を澄ませると、知らない言語で話している


「どうやらここは異世界の様だ。この世界の言葉を知る必要がある」


エリザの世界は、言語が一つしかないため、すべての魔物は同じ言語で通じる。つまり、知らない言葉を話す生物がいる時点でここが元の世界では無いとオーガキングは判断した


配下に、ビルの前を通りかかったサラリーマンを連れてこさせる。この世界の生物の強さが分からないため、一番立場の弱い普通のオーガを捨て石として使ったが、どうやらその生物はオーガよりも弱いらしく、抵抗らしき抵抗も無いまま連れてくる事に成功した


オーガ達は、肌の色こそ緑色だが、小さな角を除けば見た目はそこそこコスプレをした人間に見える


「な、なんの様ですか……?」


連れてこられたサラリーマンは、オーガたちを見て、肌を緑に染めた頭のおかしい不良では無いかと思い、下手に出る


「やはり、言葉が分からないな」


オーガキングは、身振り手振りで色々なものを尋ねる。サラリーマンは、よく分からないまま答えていく


その過程で、オーガキングは質問に必要な単語を覚え、日本語を理解していく。サラリーマンは、すでに遅刻確定で、それどころか命の危機であると思っているが、されることは質問だけであり、危機感が薄れていった


オーガキングは、まだまだ他に人間が居る事が分かっているため、オーガに命令を下す


「おい、こいつの耐久力を調べろ」


「はい」


「な、なにを」


配下のオーガは、拳を振りかぶると、サラリーマンに振り下ろす


サラリーマンは、まるで巨大なハンマーに殴られたかのようにつぶれて死んだ


オーガキングはその死体を調べ、魔物と違い、ただの動物に近いと判断する


つまり、言葉が話せるだけの動物だと。そして、この辺を縄張りとすることに決める


「よし、もっと情報を集める。こいつらは弱い。もっと大人数を連れてきても平気だろう」


オーガキングは、付近の人間を攫う事にしたのだった

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