第11話 メデューサの魔道具

「タケルはメデューサの事を知らないわよね?」


エリザはタケルに確認の為、指で目玉を転がしながら尋ねる。


「えっと、名前自体は聞いたことがあるんだけど、それがエリザの言うメデューサかどうかは分からないよ。ちなみに、僕が知ってるメデューサは、髪の毛が蛇になってる女性で、その姿を視たら石化するんだ。鏡に反射した姿なら石化しないから、鏡を見ながら倒すっていう話に出て来るよ」


「石化させるっていうところは一緒ね。私の世界のメデューサは、単眼の蛇で、その目から石化する魔法をビームの様に発射して魔物を石化させたあと、砕いて魔石を食べるのよ。だから、鏡越しだろうと目をつぶろうと、ビームを食らったら石化するわ。そして、その単眼がこれね」


エリザは、遊んでいた目玉を親指と人差し指で挟んでタケルに見せる。ビー玉の様に綺麗な目玉だが、話を聞いたあとだと石化ビームが出そうで怖い。


「石化を防ぐ方法は、単純にビームを避けるか、ビーム以上の障壁で防ぐ事かしら」


「あたしは、普通に障壁で防ぎました」


「ジーナの強さなら出来るけど、普通は無理ね。大抵の魔力障壁を貫通する威力があるわ。ただ、それをそのまま魔道具にしたんじゃ、燃費が悪すぎてすぐに使えなくなってしまいそうね。そうだわ!」


エリザは、思い付きのままメデューサの目玉の加工に入る。


「出来たわ!」


完成した魔道具は、ペン先に小さな目玉がついたペンライトの様なものだった。


「これは、魔力消費を節約して効果範囲を狭めた者よ。別に、全身を石化させなくても、ここから発射されたビームが当たればちょっとした範囲が石化するわ。たとえ魔物であっても簡単には防げない威力を維持したまま、省エネにした優れものよ。これなら、軽いし簡単に扱えるし、便利でしょ?」


「あ、ありがとう……」


タケルは、目玉が気になりつつも、ヘルハウンドの魔道具だけでは心もとなかったのでお礼を言う。試しに、その辺の地面にピッと使ってみたら、コンクリートすら石化した。黒っぽいコンクリートが、灰色の石になってひび割れる。


「うわっ、これって生物以外にも使えるんだ」


「そうよ。だから、無機物の魔物にも使えるわ。でも、無駄使いはだめよ。もう少し空気中の魔素が濃くなって、魔石にある程度補充できるようになるまでは大事に使ってね」


「分かった、大事に使うよ」


「エリザちゃま、何か、あたし、じろじろ見られてません?」


巨大な燃える猪が目立つのか、人が集まり始めていた。そして、一部の人はジーナの方をちらちらと見ている。ジーナは、顔は猫ではあるが立ち姿はほとんど人間であるため、コスプレなのかモンスターなのか判断がつかないようだ。ただ、タケルやほぼ人間に見えるエリザが近くに居るため、まだ騒ぎにはなっていない。


「ジーナの姿が珍しいからよ。元の姿に戻れって言ったけど、今度は人間の姿に変身した方が良いわね」


「分かりました、それじゃあ、それっぽい姿に変身しますね」


ジーナは、集まってきている辺りの人間の姿を見回し、自分の姿を決める。その姿は、エリザよりも少し背の小さい美少女だった。少し目つきが鋭い以外は、特に目立つ姿ではないが、あたりがざわざわと騒がしくなる。


「ちょっと、人前でそんな事をしたら目立ち過ぎるよ!」


「あ」


タケルの指摘に、エリザはしまったという顔をする。そして、野次馬が写真を撮ろうと構え始めたので、慌てて逃げるエリザ達だった。

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