第7話 現状
タケルの家は、歩いて20分くらいの所にあった。ただ、今回は歩きではなくエリザがタケルを引っ張り上げて低空飛行していったので数分でついた。
「やっぱり、飛べると早いんだね」
「それはそうよ。慣れれば、タケルもきっと飛べるわ。だって、この世界には空を飛ぶ乗り物なんていうのもあるんでしょ?」
「あるけど、僕はパイロットでも無いし、そもそも免許も無いから無理かな」
「そうなの? よく分からないけど、魔法でなんとかなるかもしれないわよ。青年が持っていた本に描いてあったもの、背中から翼を生やせる人間が」
「それは……多分、空想なのかな?」
「魔法はイメージって言ったでしょ? 想像できるなら、きっとできるわよ」
「それなら僕も飛んでみたいな」
「じゃあ、練習用に魔石を集めましょうか。いろんな種類の魔石を集めれば、きっとどれか飛ぶのに適したものがあると思うわ」
「魔力を集める以外で魔物を狩る事っていいの?」
「いいわよ。魔物って、実は勝手に生まれることもあるのよ。私自身もよくわかっていないんだけど、私の祖先も強い魔力場から発生した魔物の1体だったって話だし」
「エリザでもよく分からないんだ?」
「私の世界では、そんな事知る必要も無かったし、知りたいと思うような知性ある魔物も少なかったしね。それよりも、タケルの家って大きいのね。私のお城ほどじゃないけど」
エリザは、比較的大きなアパートを見あげて言う。
「あはは、これ全部が僕の家じゃないよ。僕の家は、ここにある扉の一つだよ」
「そうなの? まあいいわ、行きましょう」
「3階の端っこだよ」
「それを早く言ってよね」
タケルは、階段を上ろうとするが、それよりも早くエリザはタケルの手を掴んで飛び上がる。すぐに3階の端についた。
「このあたりは被害が無いみたいだけど、他はどうなのかな? テレビはつくかな」
タケルはテレビの電源を入れる。電気が点くところを見ると、発電所などは無事の様だ。だが、いつまで無事なのかは分からない。
「緊急ニュースがやってる。場所はどこかは分からないけれど……」
テレビでは、女性アナウンサーが安全の為かヘルメットをかぶりながら中継をしていた。タケルは、アナウンサーも命がけの仕事なんだなと思いつつ、貴重な情報なので注視する。
「見てください、見た事の無い生物があふれています! これは、特撮でも、CGでもありません、現実の出来事です!」
カメラは、どこかの交差点を映す。そこには、複数の見た事の無い動物が、大きな魔物から逃げている様子が映っていた。
「これ、モンハンのCMとかじゃないよね……?」
「モンハンとはゲームの事よね、青年も持ってたわ。すぐに電池が切れてものすごくがっかりしていたもの。あの時は、数日ふさぎ込んでいたわね」
「ゲーマーにとって、ゲームが出来なくなることはショックだからね。って、テレビの人たちも逃げた方がいいんじゃ!」
果敢にもズームで大きな魔物を映していたカメラマンの方を向いた魔物が、大きく口を開ける。それはどうみても欠伸ではなく、攻撃の動作――ブレスの前兆だった。
「に、逃げ――」
誰かの逃げろという声が聞こえた瞬間、魔物の口から白い稲妻がカメラに向かって放たれ、放送が中断された。画面がテレビ局に代わり、何があったのかという憶測をコメンテーターとかが発言していたが、大した情報にならないと思い、タケルはチャンネルを切り替える。どこのチャンネルも、生放送で現場を映していて、比較的安全そうな場所から撮られた映像には、街を闊歩する人型の魔物も映っていた。
「結構な数の魔物や動物がこっちに来ている様ね」
「ここも、いつ襲われるか分からないね。どうすればいいのかな」
「落ち着くまで、待つしか無いわね。大丈夫よ、この場所は私が守るから。あっ、でも私の魔力にも限りがあるし、狩りには行かないといけないわね」
「それなら、僕も行くよ。エリザばかり危険な事をするのは男として容認できないし」
「ふふっ、別に私は守られるような弱い存在ではないけどね。まっ、狩りに行く前にやることがあるわ」
「そうだね。僕も準備しないと」
「違うわよ。せっかくゲームがあるんだし、一狩りやりましょうよ。いつ、出来なくなるか分からないもの」
「エリザは余裕だなあ……」
そういいつつも、タケルもゲームが出来なくなったら嫌だなと思い、先にゲームの中で一狩りするのだった。
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