第6話 魔素
「しばらくは様子見かしらね。見た所、私の世界のものも色々とこっちに来たみたいだし」
地面に転がる石や草、倒れた木々や魔物ではない動物が視界に入る。
「これから、どうなるんだ……?」
タケルは、ヘルハウンドの様な魔物が現れた事で、地球がどうなるのか不安だった。実際、どれだけの被害があるのかすら分からない。ポケットからスマホを出して調べようとしたが、情報が錯綜しすぎていて何が真実で何が嘘かが分からない。テレビは、どこかの場所を中継していて、ここと同様に魔物が暴れている事が分かったが、それでどうすればいいのかは分からない。
「そうねぇ、私達魔物は生きるのに魔力が必要なの。けれど、普通なら空気中に含まれている魔素だけで十分なのよ。ただ、問題はこの世界の空気にはほとんど魔素が含まれていないことね」
エリザは、地面に落ちていた草を拾う。
「だけど、この魔草があるなら話が別ね。見た所、魔木もあるみたいだし。魔草は生命力が高いから、すぐにどんな場所でも繁殖して魔素を空気中に放出するわ」
「それなら、魔物は人を襲う事は無くなるんだね?」
「そうなるはずよ。けれど、それまでは人は襲われるかもしれないわ。ヘルハウンドが暴れていたのは、魔力が減ったのを補充するというよりも、急に知らない場所に来て混乱して暴れていたんだろうし。実際、ここの人間は魔力がほとんど無いから襲う意味はないしね。魔物は同族は絶対に食べないけれど、他の魔物の魔石から魔力を奪うわ。だから逆に、魔物以外の動物のほうが人間を襲いそうね」
実際に、建物の被害こそあれ、ヘルハウンドによって人が殺されることは無かった。ただ、見た事の無い場所や人を見て興味を示したことが襲っている様に見えただけだ。それよりも、狂暴な動物が人間を食い殺し、被害を出している。国によっては、それらの動物を射殺する事が出来たが、日本では武器が無く対処する事は難しかった。
「タケルも、自衛のために魔法を練習しないといけないわね。魔物は、他の魔物に襲われないように独自のコミュニティを作るはずよ。ただ、それが出来上がるまでどれほどの被害が出るかは分からないけど。それはそうと、私も自分の仲間を探さないといけないわね」
「エリザの仲間もこっちに来ているのか?」
「たぶんね。吸い込まれるところを見たし。けど、それ以外は分からないわ。もともと私の種族はそんなに数が多くないし、それに近くにも居なかったから」
「そっか……。見つかるといいね。僕も一緒に探すよ」
「ええ。ありがと。けど、まずはタケルには生き残れるだけの強さを手に入れてもらわないといけないわね」
「あはは……お手柔らかに。まずは、僕の家に寄っていいかい? 移動するなら持っていきたいものとかあるんだ。通帳とか」
「構わないわよ。やみくもに動いてもダメだと思うし、それに、あるんでしょ?」
「え、何?」
「TVとかゲーム機とか。青年が言っていたわ、必ずあるって」
「まあ、あるけど……いいの? そんなにゆっくりしてて」
「大丈夫よ。私のじぃはそんなに弱く無いもの。その辺の魔物になんて負けないし。むしろ、私を探しに来るはずだよ。近くにいれば、魔力感知で分かるわ」
「そうなんだ。それなら、僕の家に行こうか」
「ええ」
エリザとタケルは、タケルの住んでいるアパートへと向かった。
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