第41話

「なんでここにいるの……?」


 吉田さんとのデートの約束を果たすため、ぼくは駅前広場に行ったわけ。

 そしたら見ちゃったわけ。

 何をって……?

 みんな、もう想像がついているかと思うんだけど、園山さんだ。


 10時の30分前、午前9時30分、いつものクセで、かなり早く待ち合わせ場所に到着したぼくを待っていたのは、吉田さんではなく園山さんだった。

 なぜ、園山さんがここにいるのか。

 みんな説明してほしいことだと思う。気が合うね、ぼくも説明してほしい。

 説明責任があるとおもう。それが社会で生きていくってことだろう?

 違うかな?

 あ、まてよ……。


「園山さんは、別の約束で待ち合わせしてるのかな?」

「いいえ、あなたを待っていました。」


 よーし、ぼくの冴え渡る推理を一発目でぶち壊してくれてありがとう。

 推理っていうか、こうであってくれという願望であることはもう全然隠せてなかった。


「ぼくは、別の用事があるからっていう話はしたと思うんだけど……。」

「ええ、聞きました。」

「その上でなんでぼくを待ち構えていたんだよっ!」


 訳がわからない。話をしたっていうのはこうだ。

 いつもの通り、ぼくが家にいるときに電話がかかってきたんだ。


 prr...


「はい、もしもし。」

「あなた、明日はどうするの?」

「園山さん、なんかここのところ毎日予定を確認してない……?」

「そうだったかしら、でも、昨日のことは忘れる主義なの。」

「そんな主義初めて聞いたよ。」

「どこかでかけるの?」

「何事もなかったかのように続けたね。……あー、うん、ちょっと用事で出かけるんだ。だから明日はごめんね。」

「そう……それで、いつ待ち合わせなのかしら。」

「うん、理解を示した感じの返事から、まったく話を聞いてない述部をよどみ無くつなげたね。」

「そんなことはいいから。」

「今回は、教えられないよ。ごめんね、あの、次に予定があったらまた遊ぼう。」

「……はい。」

「なんか不服そうな雰囲気を感じるけど。」

「いいえ?」

「本当かな……じゃあ、またね。」


 そう言って、その会話は終了。ぼくは吉田さんとデートするなんて話は一切してないし。どこに行くなんて話も。

 もしかして、出かけるってそのワードだけで待ち合わせまで押しかけてきたのか?

 なにその行動力。違う場所で待ち合わせてたら一体どうなちゃうところだったの?


「おまたせしまし・・・・た・・・・?」


 ほらみろ、待ち合わせに来た吉田さんがステータス:混乱になったじゃないか。


「おはようございます。」


 そこに平然と挨拶をぶちかます園山さん。その鋼鉄の心臓はある意味、羨ましい。

 ギギギとゆっくり首を回してぼくの方をみた吉田さん。口をパクパクと動かしている。


「どうして、園山さんが……?」


 どうしてだろうね。ぼくもわからない。本当にわからないのだ。

 別にぼくが漏らした訳じゃないということだけはとにかくお伝えしておきたいと思う。


「わかんない。」

「そうですか。」

「どうしたんですか、揃ったんだから行きましょう。」


 なんで仕切り始めちゃったの。

 ぼくたちは混乱のまっただ中に突き落とされたまま、電車に乗って移動し始めた。


 ○ ○ ○ )))


 今日は待ちに待った彼とのデートの日です。なんと彼に誘ってもらったのです、やった。

 私は昨日の夕方から夜半にかけて服を選び、今日の朝もメイクに1時間かけて、めいっぱいおしゃれして来ました。

 こ、これで彼との距離がさらに近くなるかも、いけませんいけません、そんな一気に距離を詰めては!

 はしたない子だと思われるかも知れません。せっかく、彼が優しくしてくれて、いい感じなのに私も雑に扱われる子になる気はないのです。

 ざ、雑に扱われるって、もしかして、夜電話がかかってきて、「おい、今から部屋に来いよ。」とかなんとか、そして部屋にいくと、あー、いけませんいけません。そんなこと、彼は絶対にしません。


 いずれにしても、今回のデート、私の今後に関わること間違いなしなのです。気合を入れなくては!

 侵略すること、火の如しと言われるではありませんか。

 今日も悠々、待ち合わせ時間の10分前には到着です。

 あ、彼の姿が見えてきました。

 今日も、格好いいですね!いつもシンプルにまとめたファッションで好感が持てます。

 男子たるもの、ゴテゴテした服装はよくありませんものね♪


 し、しかし、あれ……?

 彼が誰か女の子と話しています。な、なに?ナンパ?私というものがありながら?い、いえ、私はまだそういう関係ではないのですが、でへへ。

 でも、今日は私とのデートなのです。私のことを一番に考えてもらわなくては困りますね。


 と思いながら、集合場所にいってみると、そこにいた女の子は、園山さんでした。

 な、なぜ、園山さんが?

 彼が誘ったのでしょうか。

 混乱の渦中にいる私は、ギリギリ口から出せたのが、


「どうして、園山さんが……?」


 というシンプルなひとことでした。それ以上、何を言ったら良かったのでしょう。わかりはしません。

 彼に確認する意味でも、彼に視線で訴えかけます。


「わかんない。」

「そうですか。」


 本当にわからなさそうな顔をしています。

 どうなっちゃうんだろうこれ、なんて言ったらいいの。「私と彼のデートだからじゃあね。」とでも言えばいいの。

 で、デートしちゃってるって認めることになるんですよね、それだと。

 え、えへへ、で、デートだなんて、そうなんですけど、でもまだお付き合いはしてないんですよ?

 でもでも、今日のデートがうまく行ったら、これそういう関係にもなっちゃうかも。


「どうしたんですか、揃ったんだから行きましょう。」


 園山さんがそういうと、駅に向かって歩き始めました。

 え、え?行くってどこへ?どこへ行くかわかって歩いてるの?

 いえ、例え、分かっていたとしても、ついてきていいものなのこれ?


 だって、デートなんだよーーーー?!






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