第6話
「じゃあ……。」
「「「「いただきます!!」」」」
「なあ、なんで
またもや、前の席に座っている友人、陽田が聞いてきた。
なんでだろうね。
ぼくにもさっぱりわからない。
お昼休みになって、じゃあお弁当を食べようかという段になったら、
もう園山さんとともに隣に座ってお弁当をスタンバイさせていたんだから。
「やっほー!学年一の美少女、四十四田
「テンション高いなあ……。」
「四十四田さんって、思った以上に面白いな。」
突然の追加メンバーに戸惑っているぼくと陽田。
いや、陽田は自分の弁当をのんびりと食べている。戸惑っているのはぼくだけだ。
四十四田さんはわがクラスでも特別かわいい女の子で、学校でも二番なんじゃないか、一番なんじゃないかと噂になっている。
背は園山さんよりも低いが、体のラインがハッキリしていて女性らしいのが人気の秘密だ。
顔も目がぱっちりと丸く大きく、鼻もちょんと小さめでかわいい。園山さんがクール系美少女だとしたら、四十四田さんはキュート系美少女という感じだ。
制服のブレザーも少し改造されていて、襟が少し大きくなっているのも似合っている。
「なんで、四十四田さんは一緒にお昼を食べてるの?」
「フッフッフ、それはねえ……。あ、その玉子焼き美味しそうだね、私のピーマンと交換しよう。」
玉子焼きが素早く焼きピーマンと交換されていた。
玉子焼きなんてなんぼでもやるから、早く理由を言いたまえよ。
「あんね、風香ちゃんが仲良くしてるっていう男の子のことが気になったからだよ。」
「かすりちゃん……。」
なんか、園山さんがちいさく抗議を四十四田さんにしている。
「ごめんごめん」とそんなに悪く思ってない風の返事を四十四田さんがする。
クラスでも二人でいるのをよく見る。どちらかというと一方的に四十四田さんが話してる方が多い気もしているが、園山さんが嫌がらずに聞いているようだから、間違いなく仲が良いのだろう。
「風香ちゃんって、あんまりお友達と交流がないでしょ。だから私、ずーっと心配だったんだよね、それd……。」
「あ、あなたのそのミニコロッケ、私のスタミナ焼き肉と交換しましょう。」
ぼくのミニコロッケがいつの間にか消失して、スタミナ焼肉が鎮座していた。
別に構いやしないけど、ぼくのお弁当は交易所じゃないんだぞ。
まあ、ありがたくいただくけど。
「あ、おいしいな、この焼き肉。」
「よかったです。」
「それねえ、風香ちゃんが作ったお弁当なんだよ。」
「ちょっとかすりちゃん……。」
園山さんがまた四十四田さんに抗議している。自分のことをバラされるのは恥ずかしいのかな。わかるよ。ぼくも陽田によくやられてるから。
「それより、風香ちゃん、人が話してるときに遮って話すのは良くないよ。」
「すみません。」
いつもの無表情で謝る園山さん。本当に反省してるのか怪しいけど、そもそも園山さんが話してるのがレアだからな。
「あなた、焼き肉好きかなと思って作ってきたの。」
「いや、まあ嫌いじゃないけど。」
もしかして、ピオンのフードコートで大量の焼き肉丼を食べたから好きだと思ったのかな。
あれは園山さんが困ってたから、頑張って食べたのであって、別に特別好きだからじゃないよ。
わかってる?わかってなさそうだな。
「そういえば、キミ、風香ちゃんに告白したんだって?」
「え、ええ、まあ。」
ねえ、こうお友達になろうかっていうときにその話題で攻めてくる?
ちょっと、こう、あまりにも恥ずかしくて、それを出されたら身構えちゃう話題じゃない?
「はい、はっきりとお断りしました。」
「……え、そうなんだ。」
こいつ何言ってるんだって顔で四十四田さんが園山さんのことを見ていた。
なんか四十四田さんの中で想定と違ってるようだな。
「てっきり、付き合うことになって仲良くしてるのかと思った。」
「こいつ、フラレて落ち込んで戻ってきましたからね。」
「わー、そのことは言うな!」
もうバレてるからいい気もするけど、改めて言われるとなんだか悲しくなってきちゃうだろ。
「そうなんだ、でも、風香ちゃん、キミだけじゃなくて入学してからずーっと告白されつづけてるんだよね。」
「そうですね。お断りするのもあまり得意ではないのですが、慣れてきました。」
「慣れるくらい断ってるんだ。」
園山さんは表情が少ない方だけど、断らなければならないときはやはり胸が痛むのかもしれない。
なんか、告白って一方的に気持ちを伝えることになってしまうから、お互いよく知らないでするのは良くないのかもな。
「いっぺんに二人分、断ったこともあります。」
「随分、雑だな。」
ちょっと風向き変わってきたぞ。
「同じ場所、同じ時刻に呼び出されたので。」
園山さんの人気を考えたらブッキングしてしまうということはあるのかもしれない。
手紙で呼び出したりしたらどうしてもそうなるだろう。
「行ってみたら、お二人でしたので、都合いいなと。」
「都合いいで済ましていいのそれ。」
喧嘩にならなかったのか?
まあ、一方的に告白をしようなんて人、それくらいでいいのかもしれない。
いや、いいのか……?難しいな……。
言いながら園山さんを見ると、いつもの無表情ながら、ちょっと困ったような雰囲気を出していた。
園山さんとしてはやはり困ってるのかもしれないな。
「そういや、こいつの場合、改めて告白をやり直したんだけど。」
「ん?どういうこと?告白をやり直す?普通、告白はやり直したりしなくない?」
陽田がぼくの再告白のことを話し始め、四十四田さんが訝しげにぼくたちを見た。
そうですよね、ぼくもそう思うんですよ。
なんか、シチュエーションが足りないとかって言って告白を再度やったりはしないと思うんだ。
「いや、こいつがフラレたときに逆上して襲いかかるパターンをやってなかったから。」
「ぼくが思うに、告白のパターンって網羅するためにやり直したりしないだろ……。」
「え、キミ、フラレたときに襲いかかってくるヤバイ人なの?」
「ちがうよ!」
「やり直したときは、私が勝ちました。」
「なんか、端的に説明しないで!混乱するから!」
四十四田さんが真剣にわからないという顔をしている。
そうでしょうね、わからないと思いますよ。ぼくと近い感性の人がいて本当に良かったよ。
ボケしかいなかったもん、ぼくの周りに。
「結局、助けにくる人を用意してなくて、うやむやになったんですけどね。」
「ん?助けにくる人を?用意?どういうこと。」
「もう考えるだけ無駄ですよ。あきらめましょう。」
このこんがらがった状況を元に戻すのは骨が折れるし、戻ってもいいことはない。
だったら、この話題は放り投げてしまうに限る。
だって、改めて告白してフラレたって話に帰ってきちゃうじゃん!
とどろく叫びを耳にして帰ってきちゃうじゃん!
ぼくがフラレたって事実がよ!!
「なんか、うまいこと行ってるのかと思って挨拶に来たんだけど、なんか複雑なことになってるんだね。」
そうかもしれない。複雑というか、謎だけがひたすらあるんだけど。
「結局、風香ちゃんと、きみはどういう関係なの?」
四十四田さんがきくと、園山さんがちょっと得意げに答えた。
「バーチャオフ仲間。」
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