第4話
白銀聖騎士団も善戦した様だったが、曰く付きの竜-パンプキンドラゴンには、全く歯が立たなかった様だ。
「団長は悔しい…です。」
曰く、街中だから全力が出し切れなかった程の事、悔やんでも悔やみ切れないみたいだった。
「大丈夫?ノエちゃん。私が付いてるからね。しっかりして」
フレアが声を掛ける。すると、団長も中々丁度良い加減だったのか、笑顔で張り切り、立ち上がる。
「
フレアの言う通りだ。竜は自然発生的な存在ではあるが、ああまで執拗に村や街を狙うとなると何か人為的な悪巧みがあるに違いない。
「なら、団長とフレアは竜が飛び去って行った北の岩場を調べる。騎士団の皆んなは手分けして西を探してみて。何か思わぬ発見があるかも知れない。」
「エルフレンドの皆んな、悪しき竜について何か探知できたら、直ぐにでも報告して。」
「あ〜。それなら、竜は今、人の姿で、って言って分かるかな。岩場の陰でやり過ごして居るの…教えちゃった。てへ」
そう言って魔法陣を軽く耳元で展開しながら近付いて来たのは、茈の陰陽遁を操る大魔法使い・紫咲シオンその人だった。
「貴方は…?」
「私?私は、紫咲シオン。ええっと、ただの紫じゃ無くて、花が咲くの咲も入ってる特別な名字なの。」
紫咲シオン…噂は常々聞いている。確か、魔界の北にある洋館に住んでいて、時折人界にも出没しては、其の小さな美貌と悪戯で魔女と畏れられているとか何とか。確かハロウィンの日に、お菓子欲しさに一時間家の前で粘って、遂には家を爆破した事で有名だとか。
そんな危険な人物を放っておく訳には行かない。直様、大空警察に報告しないと…
「あっ。今、何処か行こうとしたでしょ。私分かっちゃうんだからね。そう言う目に見える正義って奴?うんざりちゃうわ。この前もあったな〜。確かハロウィンの日に、私はただ、家の敷地に入るまでも無くお菓子を奪える様に魔法陣を展開しただけだっつーの。何で警察とか呼ばれて、事情聴取受けなきゃなん無いんだ。ここの警察はまだ良かったけど、魔女だってバレてたら、どんな目に会ってたやら。」
秘密裏に警察を呼ぼうとしていたのがバレたらしい。しかし、それにしては特に慌てた様子もなく、ただしっかりとこっちを指差して糾弾して来るだけだ。
「それなら…それで、何の用?魔女はこんな所で油売るのが生業なの?」
「ぶーっ。魔女は余計ですよーだ。私はただ、通り掛かっただけの一介の魔法使いに過ぎないわ。あーもうやだー休みの日にまで絡まれて、全く碌な休日が無いわー。」
と、まあ、随分と派手に諦められてはいる…が、ここまでメスガキムーブを取られるとこちらもカチンと来る。
「ふーん?私だってただ急いで家に帰ろうとしてただけです〜。どうしてそんな事が言い切れるのかしら。」
嘘を付くと、シオンはうぐっと推し黙った。
漸く静かになったかと、安堵した其の時、竜の咆哮がここまで轟いて来た。
「近い…!」
アキロゼは、急いで駆け出すと、得意の魔力感知を使って、竜との距離を縮める。
しかし、フラッと身体が揺さぶられる様に軽い…重い。ドサっと道端に倒れ込むと、そのまま、また、意識を失った。
〜〜
炎 悪しき竜 顎の火焔 街並みは焼け爛れる
騎士 不屈の精神 竜を打ち仕留めん西洋の剣
傷付け合わぬ 夢の誓い ここに破れたり
ここで詩は断片してあった。確か、踊り子を続けていた頃、とある舞を披露した後、近くの老婆から教えて貰ったんだっけ。
うう…と気を確かにしようとすればするほど微睡の中に溶けて消える。自分は一体何をしに、何をして生きて来たんだろうか。深い微睡の中で、
〜〜
夜。深く街も眠りに鎮まった頃。岩場に偵察に出掛けていた白銀ノエル、不知火フレア、そして、ついでに付いて来た紫咲シオンの三者が、竜と会敵した。
ふーん。取り敢えずこれ試そっかみたいな感じで、魔法陣を足場にジャンプして行くシオン。ある程度の距離を取ると、一気に加速。ダイヤの高発火現象が起こす速度で竜の頭部に巡るキックを繰り出す。
しかし、竜はこれを寸手の所で避けると、続く第二撃に矢を放とうとして居る不知火フレアの元に
しかし、これを又ノエル団長が受け止めると、回し受けにダンスを重ねたかの様な威力・速度で、其の尾っぽを起点に竜をぶん回して行く-。
竜は飛ばされながら、口から炎を吐く。それをエルフの弓矢が貫通。口元に刺さった矢から"フレア
そしてシオンは、巨大な魔法陣を展開して、竜を大きく浮かせると、団長の
桐生ココは、今度は手脚を使って確実に押し潰そうとノエルに迫る。
竜の掌で押し倒されたノエルは、其の爪を岩場に食い込ませながら握りつぶそうとする桐生ココに抵抗して居る。
その手に矢が放たれると、これまた同じくして"
ちっと舌打ちするとフレアは直ぐに二本、三本と矢を番えると、向き直り、顔面に向けて、これを撃ち放つ。
ヒットした矢はやはりこれまた術者の短い詠唱で火炎を放つと、パンプキンドラゴンは苦しそうに、悶える。
シオンが魔法陣を幾重にも重ね、大きな爆発を起こした。
だが、パンプキンドラゴンは圧巻の立ち姿だった。
顔面は燃え、肉体は所々傷付いてはいるも、余りにも軽快に歩いて来る其の姿は、ノエルと相撲を取ろうともまさしく四天王だった。
ノエルはパンプキンドラゴンを大きく持ち上げると、地面に叩き落とし、シオンの魔法陣で、其の衝撃を何十倍にも膨れ上げさせる。
随分と派手に転んだ四天王のパンプキンドラゴンだが、炎を構え、口を閉じたまま勢いよく吸い込み、全身から炎を宿した新たなカボチャの竜・ハロウィンモードと化す。
ここから桐生ココの反撃が始まる-。
体内から巻き起こる理不尽なまでの火力に、ノエルは接近する事ができず、フレアもシオンも火力・魔力負け。これでは、何もできずに終わる。
そんな瞬間。
ダメージを負って深刻そうな立ち居振る舞いながらも、ものの見事に舞を疲労する。
其の舞に鼓舞された魂が、熱く今の内に、と急かす中、パンプキンドラゴンが口を開いた。
巨大な火焔がパンプキンドラゴンから飛んで来る中、
「認めるは、闇。病みとし病まぬ世界の救済を此処にして、お前の断頭台は、今、光の中!!」
'''
真っ二つに裂ける炎。光は炎を凌駕し、パンプキンドラゴンに癒えぬ傷跡を残した。
ドラゴンは、その場から一歩も動かない。すると、超巨大な波状の火炎がパンプキンドラゴンの体内から巻き起こり、私達は諸共吹っ飛ばされた-。
全員、岩場に当たり、かなりの血を流した様だ。
後から来た白銀聖騎士団が血の海に染まる戦い様。
どうしようもなく溢れる深い後悔と、果てしない戦力差。
これが四天王。カボチャの竜こと、桐生ココの真体である。
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