キャット・ファイト
空中を飛び退って行く最中──
ドローンの複眼は、幾つもの新情報をソウナにアップデートした。
「ANZAI」の
バンサク・ネコヅカの所蔵品目録にあった、
この汚水まみれの少女こそ、ヤヤ・ヤマの
近付いてくる地面を意識しながら、ソウナは確信する。
受け身を取って、摩耗したアスファルトを転がった。
その間にも、各ドローンは臨戦態勢。
それぞれを隙なく放射状──とはいえ五体なので不完全だが──に展開。
跳ね起きて、
自分を入れて、六対一の対峙。
飛び道具がある分、確実にこちらに有利──その筈だった。
三体が順次、回避予想地点へと撃ち込んだそれが、いとも簡単に避けられて行く!
ソウナはランダム性を増やした。
三体の同時発射に加えて、自分も二発撃ち込む。
──全てを解っていたかのように、
ピストルの一発をほぼすれすれでかわし、もう一発を露出させた
前転から地面を蹴っての加速──目にも止まらぬ
腹を貫かれたポリス・ドローンは、ビ、ビビ、と鳴り、沈黙する。
街の上空で営業する
──馬鹿な!
ソウナの身体は、自然と後方に下がっていた。
驚いた猫が反射的に行う小刻みな横跳び──それをやっていた。
汚い仕事は一番遠くから──それが裏目に出ていた。
しかし策は残されている。
ソウナは
そしてポリス・ドローンに搭載された、フラッシュライトを全点灯した。
この暗闇の中ならば、当然相手もそれを使っているに違いない。
ならば、これで視界を邪魔出来る!──筈だった。
フラッシュライトに浮かび上がる
彼女が勢いよく振った
それは正確に別のポリス・ドローンに命中、
ソウナは悟る。
全部、
右手に
なんとも単純な正面突撃。
しかし全てが完璧過ぎて止められない!
ソウナは覚悟を決める。
近接格闘では敵わない──
ならば、ドローンを仲間にしたときのように、娘をハックするしかない!
ソウナは、相手に向かって駆け出した。
残り二体のドローンで狙う以上、一番の
突然の攻勢に、相手の
しかし、その脚は緩まらない。
振りかぶられ、また突き出される
腕の一本──
いや、二本とも切り飛ばされる──
それでもソウナは止まらない。
背後から
もう片方の
首だ! 一気に突き込む気だ!
コンマ数秒の中で、ソウナは迷う。
守るか、攻めるか? ──両方だ!
ソウナは尻尾で首を守り、更に左腕を巻いてカバーする。
銃を握る右手を左腕の肘に当て、固定。続けざまにトリガーを引いた。
──指が動かなかった。
一瞬、
しかし、それは自らの働き──
自身の内側から発せられた
奇妙な出来事は、自分の眼前でも起きていた。
彼女の顔に浮かぶ、驚くような表情──力を込め、再び切り抜こうとする小刻みな震え──
これは一体──何が起っている?
ソウナが結論に達するより早く、背後から潜行したドローンが
瞬間、ぼんっ、という爆発。
しかしさすがはソウナの組んだ
相手に影響のない筈がない。
そして──沈黙した。
ソウナは再び、
やはり、引き金は引けなかった。
──どうすれば良いというのだろう?
ソウナは困惑した。
唯一解っていること──
それはさっきドローンを介して彼女を覗いたとき、自分と同じ何かが、その内に常駐している事実だった──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます