第3話「トラウマ」

校長先生のながーい話を境に始業式が終わり、学級活動での自己紹介で自分の番になった時だ。今年のクラスには知らない子ばかり。手が震えるくらい緊張していた。

「平河由良、です。27番です。前は、三年五組でした。えと、好きなものは、魔法と読書で――」

「まほう(笑)?」

一人の男子に注目が集まった。

「まほうって、あの魔法だよな(笑)?うわー幼稚園児ぽーい!」

さらに彼は周りにいる男子にも言い出した。すると、その周りの男子も笑い出した。その刹那、私は冷やかされたのだと気づいた。すぐに担任の先生が止めてくれて、続けていいよと優しく言ってくれたが、受け入れてもらえなかった、幼稚園児っぽいと言われたことに衝撃を受け、その後は何を言って自分の番を終えたのかは覚えていない。

多分、小声でよろしくお願いしますと言って終わったのだろう。

こういうやつはクラスに一人はいる、高校生になってやっとわかるようになった。

わざとではないだろうが、当時の私は少し、いやかなり傷ついていた。目に涙を溜めるほどに。でも頬に涙は伝わなかった。泣きたくなかったのだ、またさらに冷ややかされると思ったから。

まあ、そんなことがあったから自分の好きなものを公表するときは『読書』になったのだ。

「やっぱりやめよ、読書がいいや。」

私はそう決心してプリントを書き進めた。

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