第4話「夢と現実」
日が傾いて、教室が茜色に色付いてきた頃、プリントが書き終わった。
「17時半…」
萌夏の部活が終わるのは18時。私は彼女が来るまで本を読んで待ってようとしたが、ここ最近寝不足気味で寝れていない。日中の授業の合間合間に時間が少しでもあるのなら伏せて目を瞑っているが、完全には寝ていないから、その分疲労が蓄積されている。
「寝よー」
私は机にダランと伏せて、もぞもぞと動いて寝やすい体勢になってから寝た。
何もない真っ白な空間で目が覚めた。後ろから誰かに声をかけられた気がして、振り返ったら萌夏がいた。萌夏は何かを言っている。
「—————————。」
少しずつ私に近づいてきて、私に何か言っているが何を言っているかはさっぱりわからない。聞こえないのだ。どうしてしまったんだろう。
私は彼女に、「何を言っているのかわからない」と言おうとしたが、自分の声も聞こえない。萌夏にも聞こえていないようだ。
(なんで?)
そんなことを考える隙もなく、彼女は私の腕を引き走り出した。走っている途中にも声をかけてみたが、本当に聞こえていないみたいだ。どんどん私たちの走るスピードが速くなっていく、なぜかわからないが楽しい。途端、地面が割れ暗闇へと落ちていった。視界は真っ暗、感じる浮遊感、まだ落ちているようだ。けれども、一緒に手を繋いで落ちていた萌夏はいなくなっていた。不思議だ。
そして気づいた時にはまた誰かに手を引かれ走っていた。
その人は振り返ったが、ぼやけていてはっきり見えない。だが明らかに焦っていることはわかった。後ろに何かいるのだろうか。
私は振り返りその正体を見た、その瞬間恐怖に襲われ、また前を向いた時には腕を引いてくれていたその人はおらず、ただ1人で逃げた。
また気づいた時には、大きな洋風の扉の前に立って、それを見上げていた。扉の周りには何もなく、果てしなく白い空間が続いている。私は躊躇うこともなくその大きな扉を開けた。
同時に後ろからチリンというガラスの音が聞こえた—。
目を開いたら私は教室ではなく、レンガ造りの建物が続く見知らぬ狭い場所で立っていた。さっきまで教室にいたはずなのに、なぜ立っているのだろうか、机にも伏せて寝ていたというのに。
「え…?」
状況がよくわからなくて、掠れた声しか出すことができない。私は前後を見た。だがここがどこなのかわからなかった。
(夢だよ、きっと。だって学校の周りにも、自分の家の周りにもレンガ造りの建物が続いてる場所なんてない。)
「ここどこ…?」
次はしっかりと声が出た。だんだん混乱していた頭が落ち着いて、いつも通りを通り越して冷静になった。そして私は、今何を持っているのか確認した。
「す、スマホがない…、お財布もない…」
持っているのは、今着ている服だけ。スマホとお金がないと生きていけないのに…。
(そうだ、ここはどうなんだろう。)
そう思った私は、今いる路地裏であろうところから人の声がする方へと足を進めた。
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