45 小春さんとデート?②
一応、小春さんについて化粧品を売るお店に入ったけど、化粧品の種類が多すぎて何を買えばいいのか全然分からない。やっぱり、小春さんに連絡をしたのは正解だったな。ネットで調べてみた時、何を言ってるのか全然分からなかったからさ。
それに俺の目には全部同じ色に見えるけど、全部違う色って書いてるし……。
ここに来て分かったことは女子より女子の化粧品がもっと難しいってこと。
「それで、何を買ってあげたいの? 化粧品って言われてもいろいろあるからね」
「えっと……、俺は……メイクしたことないんで。女子がメイクをするためには何が必要ですか?」
「そこからかぁ。その前に、小冬ちゃんは化粧品持ってるの?」
「いいえ、持ってないです。でも、この前に友達と遊んだ時リップをもらいました。それだけですね」
「ふーん。そうなんだ。じゃあ、ここは私に任せて! 小冬ちゃんに似合いそうなメイク方法や色、私が教えてあげるから」
「助かります」
そう言った後、小春さんはものすごいスピードで買い物カゴに化粧品を入れる。
ちらっとカゴの中を見た時……、ファンデーションとか、アイブロウとか、いろいろ入ってたけど、名前しか知らなくてそのまま小春さんに任せることにした。
「そういえば、千秋くんは清楚系が好きなの?」
「えっ?」
「あるいは、セクシー系?」
「えっ? えっと……、すみません。どういうことですか?」
「好きな女の子のタイプだよ! バカ……」
「えっと……、ないです」
「えっ? ないのに……、わざわざ化粧品をプレゼントしようとしてるの?」
「タイプとか、考えたことありませんね。でも……、今は小冬さんが好きなことをさせたいなと……そう思っているだけです」
「本当に不思議な人。好きなら好きってはっきり言ってもいいのにね〜」
好きか……、よく分からないな。
ずっとそれについて考えてみたけど、やっぱり俺にはよく分からない。
だから、深く考えないようにした。よく分からないことについてどれだけ考えてみても、こういった答えは出せない……。俺は……今のままでいいと思う。そして花柳と一緒にいるの嫌いじゃないからさ、そばにいると楽になるから。
「はい! 合計で2万6290円になります」
「やばっ! 私、入れすぎたかも……」
「いいえ、大丈夫です。払いますから。3万円でお願いします」
「はい! かしこまりました!」
「い、いいの……? 私も払うから!」
「いいえ、問題ありません。俺が払います」
「…………」
……
その後、小春さんと近所のカフェに来た。
いつもの通りケーキとコーヒーを注文して、そこで小春さんと話を続ける。
「今日はありがとうございました」
「私も払うつもりだったのにぃ〜。本当にいいの?」
「はい。おかげでいろいろ買いましたし、俺にはできないことを小春さんにはできますから、感謝しています」
「ふーん。だから、小冬ちゃんが最近ずっとテンションが高かったんだ」
「はい?」
「そろそろ話してくれない? 千秋くんって……、小冬ちゃんと何がしたいの?」
「分かりません」
この質問……、前にも言われたような気がする。
いや、俺が自分に言い返していた言葉か。
なぜ、男女関係にそこまで執着するのか俺にはよく分からなかった。一緒にいたいから一緒にいるだけさ、それ以外の理由はない。それはお腹が空いた人が、美味しいご飯を食べたくなることと同じことだ。
そこに理由はあるのか? そうしたいから、そうするだけ。
「そういえば……、この前小冬ちゃんがね。なんって言ったっけ……。付き合ってないけど、付き合ってる……って感じ? それどういう意味?」
「あっ、それなら……。俺たちは学校で恋人ごっこをしています」
「えっ? どういうこと? 恋人……ごっこ? えっ?」
やっぱり、大人の小春さんには理解できないことだよな。
でも、分からないとは言わない。
そして俺は学校であったことを小春さんに簡単に説明してあげた。少なくとも恋人ごっこをしている理由くらいは分かってくれると思う。そうするしかなかった。そっちの方がもっと効率的だったからさ。
「……理解できない」
「…………」
「二人はそれで満足してるの? 男女が一つ屋根の下で暮らしているのに、本当にそれでいいの?」
「はい。何か問題でもありますか?」
「…………」
小春さんは納得いかないような表情をしていた。
でも、それ以外良い方法はないから。
「まあ、二人がそれでいいなら……。私もそれでいいけど」
「はい」
「とはいえ、小冬ちゃんがね……」
「はい」
「その恋人ごっこにすごく喜んでいたよ、知ってるの?」
「いいえ、いつもと同じだったので」
「小冬ちゃんは……、恋について何も知らないの。そしてそれは他人が教えてあげられるようなことじゃないからね。自分が……、やってみないと分からない。それくらい分かってるよね? 千秋くん」
「…………」
小春さんは……、何が言いたかったんだろう。
「だから、私は理解できないんだよ。千秋くんは……、もしかして小冬ちゃんとあれがしたいの? じゃないなら目的はなんなの? 本当にあの子が可哀想だから居場所を与えて、バイト先を紹介してあげて、部屋着を買ってあげて、そして3万円を出してあの子のために化粧品を買ったの?」
「はい。そうです」
少しずつ声を上げる小春さんだった。
多分、俺の態度が気に入らなかったかもしれない。
「じゃあ、今後小冬ちゃんと付き合う予定は?」
「多分……、ないかもしれません」
「じゃあ、なぜあの子に幸せという感情を教えてあげたの? 小冬ちゃんは千秋くんのおかげで毎日がすっごく楽しいって私にラ〇ンを送ってるよ?」
「小冬さんは笑う時が一番可愛いですから……」
「本当に……、変だよ。千秋くんは」
「そうですか」
そう言った後、俺は小春さんとうちに向かった。
両手に花柳にあげるケーキと化粧品を持って———。
「今日……、千秋くんの家に泊まってもいい? ホテル……予約してないから」
「はい」
「さっき……、声を上げてごめんね」
「いいえ」
「だって、千秋くんみたいな男初めて見たから……。そんな男が世の中にいるわけないでしょ!?」
「そうですか……。でも、世の中広いですからね……」
「本当に……、不思議!」
そう言いながら、俺の頭を撫でる小春さんだった。
そして「今日、いつ帰ってくるの?」ってラ〇ンを送る花柳に、「すぐ帰ります」と返事をする。
そろそろ、夕飯を食べる時間だからさ。
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