43 他人の気持ち②
今日もラ〇ンで俺を呼び出す小林。
ちょっと話したいことがあるって言われたけど、それ……ほとんど千秋の話だからさ。あるいは、花柳の陰口。正直に言うと、少し面倒臭い。小林とは中学生の頃からずっと同じクラスで、それがきっかけになって仲良くなった。
個人的にそれを運命だと思っていたけどな。
中学生の頃にはごく普通の女子中生だったけど、高校生になってからイメチェンして、たまに告られるようになった。そして一緒に過ごしてきた時間があるから、なぜか彼女を目で追ってしまう。
それが俺の初恋だった。
「どうした? 小林……。いきなり呼び出して」
「ねえ、聞いた? あの二人、マジで付き合ってるって。正気? マジで理解できないんだけど、私……」
「まあ、付き合ってるって千秋がそう言ったから」
あいにく、俺が好きだった人は高校生になってから友達の千秋に惚れた。
そして中学生の頃には穏やかな性格だった気がするけど、小林の周りにいる人たちが全員イケてるグループのギャルだからか。今は口がうるさい。そのせいで俺が好きだったあの時の小林がだんだん消えていくような気がした。
そして最初から俺のこと……、好きじゃなかったし。
ずっと俺に千秋の話をして、千秋についていろいろ聞くだけだからさ。
まるで道具みたいだ。そう、俺はただの道具……。必要な時にいつもこんな風に俺を呼び出すからさ。
「はあ……、あの先輩と別れてやっと私にチャンスが来たと思っていたのに……。どうして、どうしてあのクッソ〇ッチなんだよ!」
「あっ、そうだ。あれ見た? 二人とも同じブレスレットやってたけど」
「火に油を注ぐの? そんなこと知ってるから!」
「そうなんだ……」
ああ、クッソ面倒臭い女だ。
お前が千秋に選ばれなかったのはお前の性格に問題があるとは思わないのか?
マジで頭の中覗いてみたい。
「ねえ、澤田くん。何か方法ないの? 二人を別れさせる方法」
「…………」
でも、俺はどうしてこんな時に花柳のパンツを思い出すんだろう。薄桃色の……。
ああ、千秋はいいな。あんなに可愛くてか弱い女の子と付き合ってさ……。
いつも小さい声で千秋に声をかけたり……、こっそり袖を掴んだりするところがすごく羨ましかった。なんか、我慢していた支配欲が湧いてくる……。そして小林はもうダメだからさ。
俺は小林のためにずっと我慢していたけど……。
それにいろいろ……、頑張ってきたのに、全部水の泡になってしまった。くだらない。
「ねえ、聞いてるの?」
「あっ、うん。聞いてる。そういえば……、俺気になることがあるけど。聞いてもいい?」
「何?」
「花柳のことだけどさ。〇〇活とか、大学生に媚びを売るとか、それ本当?」
「いつだったのか分からないけど、女子大生に見える人が花柳を殴ったから」
「そうなんだ。〇〇活は?」
「あ、それね。前に誰だったっけ、隣クラスの人が話してくれたけど。〇〇公園知ってるよね?」
「ああ、あれで有名な公園だよな。そこ」
「そこでた〇〇ぼしてたって」
「でも、やったのかやってないのかは分からないだろ?」
「普通の人はあんなところでた〇〇ぼしないよ。汚い。しかも、あの人……先月まで体にあざが多かったでしょ?」
「それは……、そうだけど」
確かに、腕とか首とか、体にたくさんのあざがあったのを覚えている。
それはあの人たちに殴られたからか? 媚びを売って———。
そしてそこでた〇〇ぼをやってて〇〇活をしているって噂が広がったのか。でも、千秋と付き合っている時点でそれはただの噂かもしれない。それにしても、裏やしいな。井上先輩のことも、花柳のことも、いつも可愛い女の子と一緒にいていつも可愛い女の子たちに好かれてさ。
なんで、俺だけ。彼女ができないんだろう。
そして千秋に彼女ができればきっと千秋のことを諦めると思ってたけど、別れるまで待つとは思わなかった。本当にクソだな、小林は。
「…………」
俺が好感を持っていた女の子たちはすべて千秋に好感を持っている。
そんなことある? あり得ない。
「ねえ、それで何か方法ないの?」
「…………あのさ、千秋を諦めるのはどうだ?」
「はあ? そんなことできるわけないでしょ? ずっと……好きだったから」
でも、今の俺は疲れた……。その話を聞くと、うんざりする。
だから、俺もずっと好きだったこの気持ちを捨てることにした。
「俺、小林のこと好きだけど……」
「はあ? い、いきなり?」
「中学生頃からずっと同じクラスだったし……、それに小林のそばにいたのはいつも俺だったからさ。今もそうだろ?」
「ええ……。本気で言ってるの? それ」
「うん。井上先輩と付き合った時に告白しようとしたけど、小林ずっと千秋を見ていたからそうできなかった。だから、今俺の気持ちを伝えたい」
千秋と一番仲がいい人は俺だ。
小林もそれを知っているから、俺を利用しているんだろ? でも、冷めた。
だから、諦めることにした。
「ご、ごめん……。ごめんね。私……は、千秋くんが好きだから」
「うん。分かった……。断れると思ってた」
「…………」
いつか……、いつか小林と付き合えると思っていたけど。
やっぱり、そんなくだらないことに執着するんじゃなかった。
その結果、俺は千秋に花柳を取られてしまったからさ。このうるさい女を早く捨てなかった俺のせいだ。馬鹿馬鹿しい……。
「…………じゃあ、二人のこと陰ながら応援するからさ。俺はやめる」
「えっ? ちょ、ちょっと待って!」
「頑張れ〜。小林」
「…………」
これで終わり。
さて、俺はどうやって花柳に声をかければいいんだろう。
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