40 女子会③

 もしかして……、美咲ちゃんはお金持ちかな……?

 さっきから可愛い洋服をたくさん買ってるけど、これでおよそ三万円くらい使ったと思う。すごいお金持ち……。それに私も美咲ちゃんにリップをもらってしまったから、なんか負担をかけたような気がする。


 リップもけっこう高そうに見えたから……。


「小冬ちゃんが選んでくれた洋服全部気に入って全部買っちゃった! あははっ」

「ううん……」

「どうしたの?」

「なんか、余計なことを言ったような気がしてね。お金たくさん使ったでしょ? 美咲ちゃん」

「あはははっ、いいの。いいの。そしてちょうど洋服を買いたかったし。でも、小冬ちゃんは何も買わないの? ついてくるだけじゃつまらないと思うけど」

「うん……。私はいい! 美咲ちゃんは何を着ても可愛いからそれでいい。そしてこういうの初めてだから、楽しいよ! すっごく!」

「くっ———! 可愛い! じゃあ、何か食べよう! 甘いもの! 食べよう!」

「うん……!」


 そう言った後、美咲ちゃんと近所のカフェに来た。

 実は私も可愛い洋服を買いたいけど……、そんなお金ないし、それよりもっと買いたいことがあったからずっと我慢していた。千秋くんに……、プレゼントをしたいから……。でも、今までプレゼントとか贈ったことないから何にすればいいのか分からない。そして千秋くんの好きなものも全然分からないからテーブルの前でぼーっとしていた。


「美味しそう〜、やっぱり疲れた時はケーキだよね〜?」

「…………」

「小冬ちゃん? どうしたの?」

「えっ? あっ、な、なんでもない! ケーキ! 美味しいよね!」

「もしかして〜、望月くんのことを考えてたの〜?」

「そ、そんなことしてない! わ、私は……! その……」

「あらあら〜、冗談ですけどぉ。へえ〜、そうなんだ。望月くんに会いたいんだ〜」

「そ、そんなことないよぉ! か、からかわないでぇ」

「可愛い〜♡ 顔に出てるから隠しても無駄ですぅ」

「…………」


 恥ずかしくてずっとケーキを見ていた。

 そんなに分かりやすいのかな……、私。

 でも、今までずっと私のためにいろいろやってくれたし、無視してもいい私を拾ってくれたから———。そんな千秋くんのために……、私は何を買えばいいのかな。よく分からない。あの人と付き合っていた時はいつも雑な扱いをされたから、感情を知ろうとしなかった。


 でも、千秋くんに出会って、幸せというのを少しずつ習っていく。

 それが好きだった。


「小冬ちゃん? どうしたの?」

「えっ? ああ……、わ、私ね。美咲ちゃんに相談したいことがあるけどぉ」

「何!? なになに!? 恋バナ?! 好き!!!」

「えっと……、同い年の男子に何をプレゼントしたらいいのか……。それがよく分からなくてね」

「それ……、望月くんだよね?」

「そ、そうです……」

「じゃあ、それはケーキを食べた後、一緒に選んであげるから! そしていろいろ聞きたいことがたくさんあるけどぉ。いいかな?!」


 美咲ちゃん……、なんかすごくテンションが高い。

 そして聞きたいことがたくさんあるって言われたけど、なぜか不安を感じる。難しい質問が出てきそうで、少し緊張していた。


 例えば「どこで出会ったの?」とか「誰が先に告白したの?」みたいなこと。

 私は……千秋くんと本当に付き合ってるわけじゃないからね。私のためにそう言ってくれただけだから———。


「二人はどこで出会ったの!? 知りたい!」

「…………」


 やっぱり……、それが出ると思った。


「えっと……、が、が、学校で偶然! えっと、千秋くんに声をかけられてね」

「へえ、そうなんだ。望月くんって普段は女の子とあまり喋らないし、いつもクラスでぼーっとしてるイメージだからね。そうなんだ……。確かに、こんなに可愛い女の子なら私も声かけたくなるかも?」

「そ、そう……? そんなに可愛くないと思うけど……」

「ええ、そんなことないよ! 小冬ちゃんは本当に可愛いからね! まるでいの——あっ、なんでもない!」


 さっき……、何を言おうとしたのかな? 気のせい?

 そのままケーキを一口食べる。

 ここのケーキは甘くて美味しい……。次は千秋くんと一緒に来たい……。一緒に来てくれるのかどうかよく分からないけどね……。


「そういえば、みんなびっくりしたよね。望月くんがいきなり付き合ってるって言ったから」

「そうだよね。内緒にしていたけど……、あははっ……」

「ねえねえ、望月くんと二人っきりの時は何するの? すごく気になる! 大智くんがね。千秋ってマジでカッコいいけど、マジで面白くないやつだからって言ったことあるの。実際どうかな?」

「えっと……、たまに何を考えているのかよく分からない時もあるけど……。それでも、私のこと……大切にしてくれるし。風邪ひいた時もね、おかゆとか薬とか用意してくれたし。優しくてカッコいい人だと思う」

「へえ、そうなんだ……。小冬ちゃんは望月くんのこと大好きだよね〜?」

「…………」

「ごめん、ごめん。もう言わないから、あはははっ。小冬ちゃんの顔真っ赤になってる〜」

「もう……」


 いけない、恥ずかしくて顔が熱い……。

 それにだんだん熱くなっているのが感じられるほど恥ずかしかった。

 これが女子同士でよく話す「恋バナ」ってことなんだ……。すごく楽しいけど、すごく恥ずかしい。でも、なぜか心がドキドキして……、すごく気持ち良かった気がする。私にもよく分からない。


 そのままコーヒーを飲んでいた。


「そろそろ、行こうか! 四階にアクセサリーとかいろいろあったからね」

「アクセサリー……」

「こういう時はペアアイテムでドッキリだよ!!! 小冬ちゃん!」

「ド、ドッキリ……」

「そう! 行こう行こう〜!」


 また私をどっかに連れて行く美咲ちゃん。

 こういうのまだ慣れていないから……、もう少し考える時間が欲しかったけど、美咲ちゃんのテンションには敵わない。そして知らないうちにアクセサリーを売っているお店に来ていた。


 早い……。


「ゆっくり選んで! 私も選んであげるからね!」

「あ、あ、ありがとう……!」


 でも、な……何にすればいいのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る