33 おせっかい②

 そして休み時間、また俺の周りに集まってくるたくさんの人たち。

 てか、授業前に話したあの言葉がそんなに気になるのか? クラスの女子たちがさりげなくあの女の子についていろいろ聞いていた。もちろん、俺は話す気ないから何も言わなかったけど、念の為花柳にはこっち来ないでってラ〇ンを送っておいた。


 俺は構わないけど、花柳を困らせたくなかったからさ。

 それは嫌だった。


(小冬さん) 千秋くん、ごめん……。私来ちゃった。

(千秋) 今、どこですか?

(小冬さん) 廊下で待ってる。


 そうか、来てるんだ……。こうなったら、仕方がないな。


「どこ行くの?」

「ちょっと友達と……」


 そして誰が俺と花柳が一緒にいるのを見たのか分からないけど……、あの人のおかげで朝から疲れてしまった。女子って本当にお喋りが好きだな。質問が絶えないっていうか、それ自体を楽しんでいるっていうか、ずっと声をかけられてさ。


 やっぱり、花柳と一緒にいる時が一番楽だと思う。


「千秋くん……! ごめんね。休み時間をずっと待ってたから、ラ〇ン見るのうっかりしたの」

「大丈夫です。おかげで助かりました。さっきまで変な質問ばかり聞かれて」

「そうなんだ……。話の途中にごめんね。でも、ちょっと後ろを見てくれない?」

「…………」


 クラスメイトたちにめっちゃ睨まれているけど、みんな暇なのか。

 それに健斗も俺の方を見ている。なぜだ?


「小冬さん、場所を変えま———」

「望月くんって、この人と付き合ってるの?」

「確かに小さい女の子って言われたけど……、花柳のことだったんだ」

「ええ、どうして花柳……」

「花柳…………」


 そして花柳の名前が出た時、一瞬雰囲気が変わった。

 多分噂のせいだと思うけど、くだらない。そんなことを信じて、人を見下すと楽しいのか? 仕方がなく花柳を人けのないところに連れてきた。たくさんの人たちに囲まれた時、何も言えず体が固まったてしまったからさ。花柳……。


 それに今も緊張しているような気がする。


「小冬さん?」

「…………」

「小冬さん……、俺を見てください」

「千秋くん……。ごめんね、迷惑をかけてしまって……。私、怖くて何もできなかった」

「大丈夫です、ここには俺たち以外誰もいませんから」

「うん……!」

「どうやら、一緒に帰るのを誰かに見られたようです」

「やっぱり、そうだったんだ……。実は私も……それについてしつこく声かけられてね」

「へえ……」


 そう言いながらベンチに座る二人。休み時間って言っても特にやることはないからさ、そのままそこでじっとしていた。そして今日は天気がすごくいい。花柳はどう思っているのか分からないけど、この静寂……俺は好きだ。


 落ち着く。


(健斗) 千秋、今どこだ?


「ラ〇ン?」

「はい。健斗ですね」

「…………」


 すると、俺の袖を掴む花柳。


「どうしましたか?」

「なんでもない……。まだ緊張しているっていうか、落ち着かないからね」

「はい」


 そしてさりげなく花柳と手を繋ぐ……、こうすると少しは楽になるかもしれないからさ。そのまま片手でスマホをいじっていた。


「手……繋ぐの……、嫌じゃない」

「そうですか? よかったですね」


(千秋) 外。


 適当に返事をした後、そばからため息をつく花柳に気づいた。

 学校は本来友達といろいろ楽しい思い出を作る場所なのに、花柳だけそうできないような気がする。どこから間違ったのか、そんなこと考えても意味ないから、俺はありのままの花柳を受け入れることにした。


「と、友達と……何話したの?」

「どこって言われて、外って答えました」

「そ、そうなんだ……」

「大丈夫です。小冬さんは……、俺と楽しい思い出を作るんです。そしてここにいますから、心配しないでください」

「うん! ありがとう!」


 そう言いながらぎゅっと俺の手を握る。


「千秋くんとこんな風に二人っきりになって、そして……さりげなく手を繋いで、これは全部……大切な思い出になる。少なくとも私はそうだと思う。千秋くんと過ごすこの普通の日常が好き! ちょ、ちょっとおかしいよね?」

「いいえ、とても素敵なことだと思います。俺も小冬さんの話通り……、そんな人生を生きてみたかったんで」

「なんか、急に恥ずかしくなってきた」

「そうですか? 可愛いですよ、その笑顔」

「えっ? そうなの?」

「はい。子供みたいで、ふふっ」

「それって……、変ってこと!? そうだよね!? 変ってことだよね!? 千秋くん」

「そんなことないじゃないですか」


 しばらくそのままじっとしていた。

 このまま授業サボろうかなと思っていたけど、やっぱり成績とかいろいろ引っかかるところが多いから無理だった。それに花柳は成績がいいからさ……。頭がめっちゃいいから、あんなことはしないと思う。


「授業サボろうかな? 千秋くん」


 するんだ……。


「ダメです」

「じょ、冗談だからね! なんか、私らしくないことをやってみたくて」

「そうですか? あっ、そろそろチャイムが鳴ります」

「うん! 休み時間って本当に短いね」

「そうですね」

「そうだ! お昼一緒に食べるよね? 千秋くん」

「はい」

「うん!」


 教室に戻る二人。

 そしてもう少し……、もう少し花柳と手を繋ぐことにした。


 ……


「どうしてあの二人はそんなに仲がいいの? 澤田くん」

「俺にもよく分からないな。それでどうしたい? バイト先に行くのもダメだっただろ?」

「うん……。あのね、澤田くん。念の為、聞いておきたいけど、本当に彼女と別れたよね? そして今は彼女いないよね?」

「そうだよ。俺にはそう言ってくれたから」

「でも、どうしてあの二人は……」


 小さい声で独り言を言うゆあ。

 そしてそんな彼女の横顔をこっそり見ている健斗だった。


「なんって?」

「ううん……。何でもない! 私たちも教室に戻ろう」

「そっか、うん」

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