23 一緒③

「ヨォ、大智。元気か」


 花柳とお昼を食べた後、友達と少し話したいことがあるって言っておいて、今大智のクラスに来ている。大智は性格もいいし、彼女と仲良くしているから少しは役に立つかもしれないと思っていた。


 もちろん、ここに来たのは花柳のためだ。

 いろいろ大智に聞きたいことがあるからさ。


「な、ななななな、なんだよ……! もしかして、今日……地球終わるのか? あの千秋がうちのクラスに?」

「どうしたの? 大智くん〜」

美咲みさきちゃん! あの千秋がうちのクラスに来たぞ! ここには……絶対何かある! 何を企んでいるんだ! 千秋! 俺たちは騙されないぞ!」

「何も企んでないし、俺が友達のクラスに来るのがそんなに珍しいことなのか? 大智」

「お前……二年間、うちのクラス来たことないだろ?」


 それはそうだな……。

 特に用事がなかったから、二年間大智のクラスに行ったことない。

 それに三年間別のクラスだったし、これは確かに俺が悪いかもしれないけど。それでも大袈裟だ。そこまで驚く必要はないだろ?


「へえ、望月くんって大智くんが言った通りイケメンだね」

「いいえ、そんなことないです」

「そうだよね? 俺もどうやって千秋と友達になったのかよく覚えてないほど、イケメンだったからさ」

「大智……」

「ふふふっ、二人は仲がいいね〜。それにどうして私には敬語なの?」

「あっ、すみません。癖なので」

「そうなんだ……」

「それで? 何かあったのか? 千秋」

「まあ、今は……お前しかいないから」

「えっ!? こ、告白なの!? お、お、俺は……まだ心の準備が! いや、ちょっと待って! 俺には美咲ちゃんがいる! ごめん! 千秋……! 俺はお前のことをいい友達だと思っている! だけど! それは早い!」

「…………」


 うわぁ……。ちょっと話しただけなのに、すぐ疲れてしまった。

 まあ、中学時代からずっとテンションの高いやつだったからさ。それもいいことだと思うけど、なんか恥ずかしくなってきた。少なくとも人の前ではあんな風に言わないでほしい。


 それに声も大きいし……。


「落ち着け、ちょっと話したいことがあるだけだ。でも、ここじゃ無理。人が多い」

「そっか? 場所を変えよう」

「あっ、わ、私も一緒に行きたい……! ダメかな? 望月くん」

「えっと……、すみません。名前……」

「あっ! 私ね。佐藤さとう美咲みさき! よろしくね! 望月くん」

「はい。よろしくお願いします。じゃあ、一緒に行きましょう」

「やったー!」


 テンションの高いやつがテンションの高い女子と付き合ったのか。

 てか、大智の彼女に会ったのは初めてだけど、お似合いだな。この二人……。


 ……


「俺……! 今、テンションがめっちゃ上がってる! なんだ! 千秋。なんでも聞いてあげるから!!! 話してみろ!」

「あ、分かった……。分かったから、テンションちょっとだけ下げてくれ。俺には無理だよ。お前のそのテンションは……」

「ふふふっ、そうだよね〜。でも、それが大智くんのいいところだから」

「まあ、それはそうですね」


 そのまま俺たち三人は屋上に来た。

 今更だけど、やっぱり言いづらいな……。花柳のためとはいえ、俺は友達にこういうの話したことないからさ。でも、俺の周りに彼女と上手くいってる人、大智以外はいないから選択肢がなかった。


 てか、なんだろう……。今の顔、めっちゃムカつく。


「大智、お前……佐藤さんと普段何をしてるんだ?」

「何!? 俺たちのプライバシーが気になるのかぁ———!?」

「いや、なんでそうなる! いろいろあるだろ!? デートをする時に、普段どこで遊んでるとか……そういうことだよ。お前と佐藤さんのプライバシーが気になるわけねぇだろ!」

「えへっ〜☆ そっか!」

「あれ? それってもしかして……、気になる人がいるってことかな? 望月くん」

「…………まあ、そうですけど。俺は……同い年の女子とそういうことやったことないんで、思い出になりそうなこと……なんでもいいです。教えてくれませんか?」

「それはデートしかないな! 千秋!」

「だから、どこ行けばいいんだ……? 俺、そういうの詳しくないから」

「てか、お前……先輩と付き合った時に何をしてたんだ……?」

「…………何も……」


 その話には上手く答えられなかった。

 そんなことより、俺は先輩のことを忘れないといけないのに…………。また思い出してしまった。先輩とのデートか……、それをデートって言ってもいいのかよく分からないけど、多分「思い出」になりそうなことじゃなかったと思う。


「まあ、それはいい。思い出になりそうなことか……」

「私たち……、普段はね。映画館とか、ううん……水族館もたまに行く! そして、お家デートもやってるから!」

「そうだね、俺たちはいつもこんな感じだからさ」


 お家デート……、同居している俺たちにはできないことだな。

 毎朝、同じベッドで朝を迎えるからさ。


「でも、やっぱり思い出になりそうなことなら映画館が一番かもしれない! 私たちもね。初めてデートをした時はホラー映画を観たから。大智くんめっちゃ怖がっていて楽しかった〜」

「大智……。お前…………」

「ご、誤解だぞ! そ、そんなことは言わなくてもいいだろ! 美咲ちゃん!」

「じゃあ、映画館……にしようか」

「いいね! てか、せっかくだし、ダブルデートしない!? 千秋」

「ああ、それはちょっと……。まだ付き合ってないから、ごめん」

「そっか、それは仕方ないな〜。俺も千秋とダブルデートしたいからさ! 早く、あの子と付き合っちゃえ!」

「付き合っちゃえ〜!」

「二人はお似合いだな」

「えへへっ、ありがとう〜。大智くん顔、真っ赤になってる〜」

「ち、ちげぇよ!」


 この二人を見ると、なんかいいなと思ってしまう。

 こういうことだろ。普通は———。


「あのね、望月くん」

「はい」

「思い出になりそうなことじゃなくて、好きな人と過ごす時間は全部思い出になるから。特にこうすれば思い出になるってことはないと思う。少なくとも私はそう思っている」

「そうですか、勉強になりました。ありがとうございます、佐藤さん」

「えへへっ」

「ここまで連れてきてすみません……。相談できる人、他にいないんで。大智もありがとう」

「ふふっ、俺は何もやってないけどな!」

「うん。確かに」

「えっ!」

「冗談だ。ありがとう」


 まずは……、家に帰って調べてみようか。ホラー映画……。

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