12 騒ぎ③
「千秋! 一体、何があったんだ? クラスのみんながお前のことばかり話していたぞ」
「なんのことだ……?」
「花柳のことさ。いや、この前にも二人きりでデートっぽいことしていただろ? どうしたんだ? もしかして、二人付き合っているのか?」
「いや、付き合ってない」
「そうか……?」
「うん」
「確かに……花柳は顔もいいし、おっぱいも大きいけど、それだけじゃねぇぞ? 世の中は」
「…………」
教室に戻ってきたらすぐ健斗に声をかけられた。
よく分からない……。俺と花柳が何をしてもこの人たちには関係ないはずなのに、どうしてそこまで興味を持つんだろう。もしかして、あの噂のせいか? でも、ちゃんと確認してみればすぐ分かるはずなのに、勝手に誤解して勝手に人の悪口を言っている。そんなの、俺はくだらないことだと思っていた。
「それで今日学校が終わった後、花柳とデートでもするのか? 千秋」
「健斗」
「うん?」
「お前は小林さんに集中しろ、花柳と俺が何をしても気にするな。面倒臭いだろ? そういうの」
「…………」
先輩と付き合う前にもそうだったけど、なぜ男女が一緒に話したり歩いたりするとすぐ噂されるんだろう。もし羨ましいとか、イチャイチャしたいとか、そういう問題なら恋人を作ればいいと思う。
みんな、気にしすぎだ。
「小林かぁ……。あのさ、もし……小林がお前に興味あるって言ったらどうする? 千秋」
「小林さんが……、俺に?」
「そう」
「なんで……? 俺なんかに? 分からない。考えたこともない」
「マジかよ……。彼女作りたくないのか? お前、振られただろ?」
「それはそうだけど、今はいい。むしろ……、俺はお前にいいチャンスができたと思うけど……。この前に小林さんとデートしていただろ?」
「…………まあ」
「頑張れ、健斗。お前ならできる」
その後、授業が始まってじっと黒板を見つめていた。
そういえば小林が俺に何か言おうとしたよな。でも、教室に戻ってきた時、どっかに行ってしまったから結局聞けなかった。どうせ、俺たちそこまで仲がいいわけじゃないから、いつかまた言ってくれると思う。
そして今は授業に集中、良い大学に行くためにはちゃんと勉強しないといけない。
どうしても行きたい大学があるからさ。
「ええ、また勉強かよぉ……。千秋」
「…………健斗はしないのか?」
「俺は……、疲れた! 寝る!」
すぐ机に突っ伏す健斗は当たり前のように寝ていた。
いつもあんな感じ、勉強とかそういうことに全く興味ないやつだから……。やりたいのは可愛い女の子とのデート、そして恋。確かに高校時代にしかできないこともたくさんあるからやりたくなるよな。
彼女とたくさんの思い出を作りたくなるよな。分からないとは言わない。
だから、俺はあの二人を応援することにした。頑張れ———。
そして放課後、廊下で俺を待っていた花柳が満面の笑みを浮かべながら手を振る。
ふと、他の人たちにそう見えるかもしれないと思っていた。
可愛いのもあるけど、俺にだけ懐くっていうか。そして花柳とちゃんと話してみるとさっきみたいな言葉は出ないはず、外見と噂だけで人を判断するのはよくない。そういうのやめてほしかった。
そして健斗が小林のことを言ってくれたけど、今の俺は花柳に集中したかった。
それ以外の女子なんか、いらない。知らない———。
「花柳さん、待たせてすみません」
「ううん……! 全然大丈夫! 帰ろう、望月くん」
「はい」
「あっ! 千秋くん、ちょっといい?」
その時、後ろから小林の声が聞こえてきた。
「ど、どうしましたか? 小林さん」
「さっき先生が呼んでたからね、すぐ職員室に行ってみて」
「そうですか? ありがとうございます」
でも、どうして先生が俺を呼んだんだろう。
分からないから、一応行ってみるしかない。
「花柳さん、俺すぐ行ってきますからここでしばらく待ってください」
「う、うん……! 分かった! ここで待つから」
「はい」
騒がしい廊下。階段を降りる千秋の後ろ姿を見て、ゆあが小冬に声をかける。
「花柳小冬、話したいことがあるからついてこい」
「えっ? 私? どうして? 私は小林と何も話したくない……。そして今は望月くんを待たないといけないから」
「はあ……、面倒臭い。二度言わせないで殺したくなるから」
「…………うっ! や、やめてぇ……」
人々の前で堂々と髪の毛を引っ張るゆあに、ついていくしかない小冬だった。
そしてそんな二人を見てざわざわする人たち。
……
「先生」
「うん? 望月くんじゃん。何しに来た?」
「はい? さっき小林に先生が呼んでたって言われましたけど? 違いますか?」
「私が? 望月くんを? そんなこと言ってないけど……? もしかして、イタズラされてるんじゃない?」
「し、失礼しました……」
「はい〜。気をつけて帰ってね」
「はい……」
先生は俺を呼んでないって、どういうこと?
つまり、小林が俺に嘘をついたってことか? どうして……? その理由が分からない。
そしてすぐ花柳のところに戻ってきたけど、今度は……花柳がいない。
さっきまでここにいたはずなのに……、一体どこ行ったんだろう? それに花柳のスマホ壊れたからどこにいるのか連絡もできないし、誰に聞いたらいいのかも分からないし、どうしたらいいんだろう。
それに健斗も教室にいない。
これはまずいな。
「…………」
「おっ、千秋! ここで何してるんだ?」
「大智……? 今日は一人か?」
「ああ、彼女なら急いで塾に行ったよ。どうした? 千秋。帰らないのか?」
「いや、ここで友達と会う約束をしたけど、消えてしまってさ」
「ああ……、もしかしてあの人か? 黒髪ロングの可愛い女の子、さっき話していたよな? ここで」
「そうだけど……」
「あの人なら……。さっき小林と一緒にいるのを見たけど……」
「どこで? どこで見た? 大智!」
「ううん……。多分……、今頃上の階にいるかもしれない。さっき二人で階段上るのを見たからさ」
「ありがとう、大智!」
「お、おう……」
俺がいない間、花柳に何があったのか分からないけど……、不安を感じる。
だから、急いで上の階に向かった。
「…………」
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