彼と1人暮らし

天川裕司

彼と1人暮らし

タイトル:彼と1人暮らし


私は今、都内のマンションで彼と同棲している。

「じゃあ行ってくるね」

仕事に出かける時はいつもこうやって

彼に挨拶してから出かけるのである。


その仕事帰り。

私は久しぶりにスーパーに買い物へ行く。

昔よく、彼と一緒に来たこのスーパー。

まだ心の整理がつかなくて、

このスーパーだけは少し避けていた。


ずっとコンビニ生活だった私。

でもそれじゃ、

「栄養取れないからちゃんとしたもの食べなよ」

って彼が諭してくれたから、私はちゃんと

このスーパーにも来れるようになったんだ。


「ウフ、ありがとね」

今日は鍋。

精のつくものや栄養の取れるものをたくさん買って、

今日は彼と2人で鍋をつつくんだ。

「これも、私と彼のささやかな幸せ♪」


ウチに帰ってからすることをして、

早速、鍋料理の準備に取り掛かる。

「あなた、できたわよー」

とりあえず声をかけておいて、次は食卓の準備。


そしてクローゼットを開けて、

「はい、あなたの分♪たくさん食べてね」

そのとき携帯が鳴った。


「あらぁ、美和子?」

美和子「あ、ごめんね!今大丈夫だった?」

「全然大丈夫よ♪なに、どしたの?」


美和子「ごめん、この前あんたの家にさー、忘れ物しちゃってたと思うの」

「忘れ物?」

美和子「もうずいぶん前だけど」


ずいぶん前に美和子がウチに来て、

きれいなハンカチを忘れて行ってた。


「あーあのハンカチね?」

美和子「そうそう、ごめんね!」

「ううん、全然大丈夫」

美和子「あれ大事なんだ♪」

美和子がその昔、大事な人からもらったハンカチ。


「オッケ〜♪じゃあ待ってるね」

美和子が今からウチにハンカチを取りに来る。


ずいぶん前なのに

ハンカチの事を思い出せたのは、

さっきそのクローゼットの中で

そのハンカチを見たから。


(美和子が到着)


美和子「ごっめんね〜、あ、ご飯食べてた?」

「ううん、全然大丈夫よ♪クローゼットの中にあったと思うから」

美和子「ちゃんとしまっといてくれたんだぁ♪助かる〜」


私は美和子を連れて、

さっき開けたクローゼットの前に行き、

もう1度そのクローゼットを開けた。


美和子「あ〜これこれ♪ありがとね〜」

そう言って忙しかったのか、

美和子はそのまま帰って行った。


彼のことを思い出すため、

その復讐を思い出すため、

私はずっとあの場所に、

あのハンカチをしまって置いたんだ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=_zcMBz3LrUQ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼と1人暮らし 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ