第20話

「潮留社長、お久しぶりです」


革靴の、軽快なのに少し怖さを感じる音が聞こえ、被さる声に私は肩を震わせた。


た、タイミング、最悪だ…


「ん?あぁ、橘家の、えー…芹様でしたな。これはこれは」


「…それは、何をされている最中ですか?」


「それを聞くのは野暮ですぞ〜」


私の左手の指と自分の指を交わらせて、ニマニマと笑い、芹も微笑み返す。


潮留社長は気分が良いのか、私の薬指の指輪を回したり、ぐにぐにと触りながら、芹と談笑する。


手がベタベタするけど、我慢我慢。


私はそれに何もできず、新たにもらったシャンパンを飲み干した。


酔いまくって記憶飛んでいて欲しい、なんて願いながら。

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