第19話

「そういえば会食の時にも思ったんだが、璃星さんは結婚してるのかね?」


「え?…あぁ、えっとこれは…」


左手を掴まれ、指輪を弄り回されて、流石に気分が悪かった。


こんなのこの世界では普通だからか、周りを見渡しても助けるなんてことは無い。


「私としては結婚していても、構わないよ。うちの妻よりも可愛がろう。勿論、璃星さんのお父さんにも大きな仕事を与える」


顔を近づけて話す社長の生温かい吐息を感じて、口角を上げることだけに集中した。


でも、今仕事をくれるって…


父の役に立てられるかもしれないと、少し揺らいでしまう。


考えてる暇はない、私は瞬時に切り替えると、耳元に口を寄せて、こっそり囁くように言う。


「潮留社長、お話ぜひ詳しく…」

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