第11話

私の顎を掴んでいる手を持ち上げて見る。


見た限り、怪我は無いけど、服で隠れてるのかも。


周りの危うすぎる光景も、普通なら吐きそうな場面も、漂う血の匂いも、正直どうでも良くて。


私は芹のシャツを握りしめて、吸い込まれそうな紫の瞳を見上げた。


表面は輝いているのに、その奥はベタ塗りした暗闇みたいで、笑っているのに、笑ってない。


「怪我って、俺が?」


「そうっ!どっか痛い?大丈夫?」


「大丈夫だよ。璃星はやっぱり璃星だね」


恍惚に変わる笑みは、今何を思っているんだろう。


芹は膝をついて、次は私が見下ろす形になった。


頬をピンク色に染めて、芹は私の腰に腕を回し、お腹に顔を埋めた。


「はぁ、はぁ、どうしよう、璃星」


呼吸が荒く、その瞳は潤んでいく。

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